「#1649. longer が leng(er) を置き換えたのはいつか?」 ([2013-11-01-1]) で,歴史的な i-mutation 形の比較級 leng(er) が,いつ類推形 longer に置換されたのかをコーパスによって調査した.今回は,同じ過程を経たと想定される最上級について同様の調査を施した結果を報告する.歴史的な i-mutation 形の最上級 lengest は,英語史のどの段階で類推形 longest に置換されたのだろうか.
Helsinki Corpus で,語幹母音のヴァリエーションを念頭に置きつつ,両形を検索した.結果を通時的に整理すると以下のようになる.
| LONGEST | LENGEST |
O1 | 0 | 0 |
O2 | 0 | 2 |
O3 | 0 | 13 |
O4 | 0 | 3 |
M1 | 0 | 1 |
M2 | 0 | 0 |
M3 | 0 | 1 |
M4 | 0 | 1 |
E1 | 3 | 0 |
E2 | 4 | 0 |
E3 | 2 | 0 |
比較級よりも例がずっと少ないが,傾向ははっきりしている.比較級の場合と同様に,E1 (1500--1570) が転換期となっている.もちろん,この少数の例のみで結論を急ぐことはできない.例えば,
lōng (adj. (1)) の用例を参照すれば,後期中英語の15世紀の Higden's
Polychronicon 訳において,"In Armeny..Ytaly and other regiones..the longeste day other ny3hte is but oonly of xv houres equinoccialle." として
longest が確かに文証される.それでも,比較級のケースと通時的な分布が似ているということは,今回の結果を評価する上で,重要な点となるだろう.
前回と同様,初期近代英語期 (1418--1680) の約45万語からなる書簡コーパスのサンプル
CEECS (The Corpus of Early English Correspondence でも検索してみたが,2期に区分されたコーパスの第1期分 (1418--1638) から
longest が1例ヒットしたのみだったので,ここから意味ある見解を引き出すことはできかった.
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