昨日の記事[2010-01-07-1]の最後に,米国でスペイン語使用が増加している件 ( Hispanification ) に触れた.今回は,これと関連していくつかの数字を示したい.
現代世界において,米国が世界語としての英語の最強の推進者であることは論をまたないが,それは米国が英語一辺倒の国であることと同義ではない.米国が多民族国家であり多言語国家であることを忘れてはならない.Ethonologue (297) によると,アメリカ合衆国で現役で使用されている "living languages" は364言語を数える.そのなかで,近年もっとも勢力を伸ばしている言語はスペイン語である.スペイン語話者の数は1970年からみて6割以上も増加しているというから驚きの加速度である.具体的な数字を出せば,1990年の調査では 22,400,000 ほど,2000年の調査では 28,100,000 ほどのスペイン語話者人口が報告されており,その10年間だけで25%増加したことになる.New Mexico ではスペイン語は公的な地位を与えられており,それ以外の諸州においても official Spanish なる表現がよく聞かれるようになってきている.(以上の情報は,書籍版 Ethonologue に加え,Online 版の Ethnologue アメリカ合衆国の項 も参考にした.)
Graddol (26--27) では,1990年代に発表された米国商務省の統計に基づいた2050年の人口分布予測が紹介されている.それによると,2050年の米国では Hispanic 人口が全人口の約4分の1を占めるという.さらに Black や Native Americans を含む非白人の総計をとると,全人口の約半分を占めることになるという.こうした予測を背景に,1990年代の米国で英語公用語論が湧き出たのも自然なことだったといえよう.
U.S. English のサイトでは Official English について詳しい解説が与えられている.Crystal (127--40) にも関連する議論がある.参考までに.
・Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm.
・Gordon, Raymond G., Jr. ed. Ethnologue. 15th ed. Dallas: SIL International, 2005.
・Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.
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