研究プロジェクト


根拠の記録を伴う書誌記述法

 書誌・目録データや記述的メタデータを構成する個々のデータ項目の値の記述処理に際して、使用された処理ルールやタスク(目録作成者タスク)の識別子または処理内容の指示、ルールやタスクへの入出力データ、値の記録日時などを、値の根拠として値そのものに加えて包括的に記録することを提案している。こうした根拠の記録により、データの品質・信頼性、情報表現力が増加し、それにより永続性および相互運用性の実現に寄与することを意図している。

1)図書等に対する書誌データとWebリソースに対する記述的メタデータに分け、それぞれに対して根拠の記録と活用場面を想定した複数のシナリオを設け、個々のシナリオに合致した根拠記録内容の決定や、根拠記録自動化・支援システム、根拠活用システムの試作および評価を行っている。

2)現時点では、下記のシナリオを設定しており、それぞれに対応する実現可能なシステムの試作および評価を行う。
2-a)根拠記録作成自動化・支援:書誌データ/メタデータへの根拠記録作業を自動化する、またはデータ作成者が当該作業を効率的に行えるよう支援する。
2-b)データ作成者向け教育・学習利用:書誌データ/メタデータの作成者が随時参照し、個々のデータ項目値に関する処理の説明として根拠を活用することにより、データ作成処理のより深い理解を支援する。
2-c)データ作成自動化・支援利用:根拠の記録の蓄積を基盤にして、新規の資料/Webリソースに対する書誌データ/メタデータ作成処理自体を自動化する、または作成処理を効果的に支援する。
2-d)データ統合処理利用:異なるデータ項目セットまたは記述方式に基づき作成された書誌データ/メタデータの統合やリンケージにおいて根拠を活用する。

3)例えば、試作を進めている、書誌データに対する根拠記録作成支援システムは、(a)図書資料の主情報源をスキャナで読み込み、OCRソフトを用いてテキストデータ化/html化したもの、および(b)当該資料に対応する既存の書誌レコード(米国議会図書館作成レコード)を受け取り、(c)書誌レコード内の転記を基本とするデータ項目に記録された値に対して、テキストデータ化/html化された情報源において該当する箇所を特定し、併せて記録された値を得るまでの各タスクの処理内容(アクション)と入出力データを推定する。

4)根拠の記録を伴う書誌レコードの一つの活用法として、書誌データ作成者によるデータ作成処理作業の理解支援を図るシステム試作を併せて進めている。ここでは、データ項目値とともに記録された根拠を、そのデータ項目値の記述作業の内容説明情報として活用している。そのためには、記録したタスクおよびアクションと現行目録規則中の個別ルールとの対応づけを別途人手により行い、両者の関係を柔軟に表現できるようにした。また、根拠記録参照機能として、システム内に蓄積された書誌レコードとその根拠記録の対を柔軟かつ適切に検索・参照・表示できる機能を備えたインタフェースを試作している。