原始より,人類は天体や自然を観察し,暦を作り上げてきた.特に身近な観察対象に,月と潮がある.1日の潮の干満の差(潮差)は半月周期で変化を繰り返し,朔望(陰暦1日と15日)のころ最大(大潮)となり,上下弦のころ最小(小潮)となる.
古英語テキストにも,月齢と潮差による暦の記述が見られる.Winchester の New Minster の修道院長 Ælfwine が,私的な祈祷書の写本をもっていた(現在では London, British Library, Cotton Titus D. xxvi--xxvii として2つの写本に分かれている).この写本が編まれたのは,1023--31年の間とされ,関与している2人の写字生のうち,1人は Ælfwine その人とされる.この写本には78のテキストが収められているが,過半数は信仰文・祈祷文である.ほとんどがラテン語で書かれているが,10のテキストについては古英語で書かれている.
古英語で書かれた世俗的なテキストの1つに「月の満ち欠けと潮の満ち引き」に関するものがある.以下,Marsden (15--16) の版より引用しよう.千年前の地学の教科書を読んでいるかのようだ.
Hēr is sēo endebyrdnes mōnan gonges ond sǣflōdes. On þrēora nihta ealdne mōnan, wanað se sǣflōd oþþæt se mōna bið XI nihta eald oþþe XII. Of XI nihta ealdum mōnan, weaxeð se sǣflōd oþ XVIII nihta ealdum mōnan. Fram XVIII nihta ealdum mōnan, wanaþ se sǣflōd oþ XXVI nihta ealdum mōnan. Of XXVI nihta ealdum mōnan, weaxeð se sǣflōd oþþæt se mōna bið eft ðrēora nihta eald
・ Marsden, Richard, ed. The Cambridge Old English Reader. Cambridge: CUP, 2004.
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