hellog〜英語史ブログ

#4129. 「コロナ禍と英語」ならこれしかないでしょ! --- OED の記事より[oed][neologism][zipfs_law][covid]

2020-08-16

 OED が発信するコロナ関連語録の記事をいくつか読んだ.特集というよりは論文といってよい質の高さである.いずれにせよこれほどショッキングかつリアルタイムの社会言語学的論考は,あまり見たことがない.読んでいると苦しくなるかもしれないので要注意.以下,いくつか主要な記事をピックップする.

 (1) New words list July 2020: この7月の新語(義)の一覧.

 (2) Social change and linguistic change: the language of Covid-19: 目下のコロナ禍のみならず歴史的な疫病(14,17世紀ヨーロッパの惨禍を含む)に由来する語彙の歴史的解説もすばらしい.取り上げられている単語を列挙すると,Covid-19, WFH, elf-isolation, self-isolating, infodemic, shelter-in-place, social distancing, elbow bump, WFH, PPE, personal protective equipment, pestilence, pest, pox, pock, smallpox, epidemic, Black Plague, Black Death, self-quarantined, yellow fever, Spanish influenza, Spanish flu, poliomyelitis, polio, AIDS, SARS, coronaviruses となる.

 (3) July 2020 update: scientific terminology of Covid-19: とりわけコロナ関連の医学的・科学的な用語が紹介されている.科学的事実が明らかになるにつれ語の定義も変わってくるという,まさに現在進行形の話題である.新型コロナウィルスを意味する語も Covid, C-19, CV-19, CV, corona など様々にあること,そして目下もう1つの省略語 rona がアメリカ英語やオーストラリア英語でトレンドになってきてことが取り上げられている (cf. 「#1102. Zipf's law と語の新陳代謝」 ([2012-05-03-1])) .なお,Covid-19, n. 自体の定義も最近書き換えられたようだ.

 (4) Using corpora to track the language of Covid-19: update 2: コーパスを用いた,今年の4月から6月にかけてのトレンドワードの調査が紹介されている.トレンドワードのリストは,まさにその時代を映し出していることがよく分かる.これほど切実な生の単語リストを,私は見たことがない.社会と言語の驚くべき関係を見せつけられた感がする.
 イギリス英語では Covid-19 の綴字が,アメリカ英語では COVID-19 の綴字が多いという結果も興味深い.6月のリストには,コロナ関連に紛れて "Black Lives Matter" に関する racism, injustice, police brutality, defund, Confederate statues なども現われる.いろいろな意味でため息が出てしまうリストである.

Keywords from 202004 to 202006

Referrer (Inside): [2021-04-23-1]

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