これまで本ブログでロシア語からの借用語について取り上げたことがなかった.「#756. 世界からの借用語」 ([2011-05-23-1]) で少々触れた程度だったので,今回はもう少し覗いてみたい.
Durkin (378--79) によれば,予想通りロシア借用語の数は多くない.ほとんどがロシアの文化や社会に関する語に限定されている.以下はサンプルではあるが,初出年代順に挙げてみる.
・ boyar (大公に次ぐ貴族) (1555)
・ tsar (皇帝) (1555)
・ verst (ベルスタ(ロシアの距離単位;=1.067km)) (1555)
・ rouble (ルーブル) (1557)
・ muzhik (農民) (1587)
・ beluga (ベルーガ;キャビア) (1591)
・ protopope (主席司祭) (1591)
・ parka (パーカ) (1625)
・ pope (教会区司祭) (1662)
・ steppe (ステップ) (a.1670)
・ copeck (コペイカ (1/100 rouble)) (1698)
・ mammoth (マンモス) (1706)
・ tsarevich (皇太子) (1710)
・ knout (革のむち) (1716)
・ yurt (ユルト,パオ(移動式テント小屋)) (1780)
・ vodka (ウォッカ) (1802--03)
・ rayon (レーヨン,人造絹糸) (1830)
・ samovar (サモワール) (1830)
・ babushka (バブーシュカ(女性用スカーフ)) (1834)
・ oblast (州) (a.1837)
・ duma (国会) (1870)
・ kulak (富農) (1877)
・ intelligentsia (知識階級) (1883)
・ borsch (ボルシチ) (1884)
・ borzoi (ボルゾイ(ロシア原産の犬)) (1887)
・ pogrom (大虐殺) (1891)
・ dacha (別荘) (1896)
・ Bolshevik (ボルシェビキ) (1907)
・ Presidium (最高会議幹部会) (1907)
・ Soviet (ソビエト) (1917)
・ Menshevism (メンシェビズム) (1920)
・ Suprematism (シュプレマティズム) (1920)
・ Politburo (政治局) (1923)
・ agitprop (アジプロ) (1925)
・ troika (トロイカ) (1945)
・ Gulag (グーラグ) (1946)
・ matryoshka (マトリョーシュカ) (1946)
・ nomenklatura (ノーメンクラツーラ) (1958)
・ samizdat (地下出版) (1967)
・ glasnost (グラスノスチ) (1986)
・ perestroika (ペレストロイカ) (1986)
ロシア借用語の数としては19世紀後半から20世紀前半がピークである.ただし,この時期は英語語彙が全体として大幅に増加した時期であるということも加味して評価する必要がある.
・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.
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