ヘブライ語 (hebrew) は,いわずとしれた旧約聖書の言語であり,ユダヤ・キリスト教の影響化にある多くの言語に影響を与えてきた.英語も例外ではなく,古英語期から近代英語期まで,ラテン語やギリシア語に媒介される形で,主に語彙的な影響を被ってきた.宇賀治 (119--20) に従って,いくつかの借用語を示そう.
・ amen: 「アーメン」(祈りの終わりの言葉).「そうでありますように」 (So be it!) の意.
・ cabal: 「陰謀団,秘密結社」.
・ cherub [ʧérəb]: 「ケルビム,第2天使」
・ hallelujah: 「ハレルヤ」(神を賛美する叫び).「主をほめたたえよ」 (Praised be God!) の意.
・ hosanna: 「ホサナ」(神またはキリストを賛美する叫び).「救い給え」 (Save, we pray) の意.
・ jubilee: 「ヨベルの年;記念祭」(ユダヤ教で50年ごとに行われる安息の年).
・ leviathan: 「リヴァイアサン」(巨大な海の怪物).
・ manna: 「マナ」(モーゼ (Moses) に率いられたイスラエル人がエジプト脱出に際して荒野で飢えたとき神から恵まれた食物).
・ rabbi: 「ラビ」(ユダヤ教の聖職者,律法学者等).
・ sabbath: 「安息日」.
・ satan: 「サタン,(キリスト教でいう)悪魔」.
・ schwa: 「シュワー,(アクセントのない)あいまい母音.
・ seraph: 「セラピム,熾天使」.
・ shibboleth: 「(ある階級・団体に)特有の言葉[慣習・主義など]」.敵対するエフライム人 (Ephraimites) が [ʃ] 音を発音できないことから,ギレアデ人 (Geleadites) が敵を見分けるためにこの語を用いた(旧約聖書 Judges 12: 4--6 より).
ほかに大槻・大槻 (96) より補えば,bar mitzvah (バル・ミツバー[13歳の男子の宗教上の一種の成人式]),Jehovah (ヤハウェ),Rosh Hashana (ユダヤの新年祭),sapphire (サファイア), babel (バベルの塔),behemoth (ビヒモス[巨獣]),cider (リンゴ酒),jasper (碧玉),shekel (シケル銀貨),kosher ((食物が)律法にかなった),kibbutz (キブツ[イスラエルの集団農場])などがある.
人名に多いことも付け加えておこう.例として,「#3408. Elizabeth の数々の異名」 ([2018-08-26-1]) と「#3433. 英語の男性名 John」 ([2018-09-20-1]) を参照.
・ 宇賀治 正朋 『英語史』 開拓社,2000年.
・ 大槻 博,大槻 きょう子 『英語史概説』 燃焼社,2007年.
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