日本語史の時代区分について,「#1525. 日本語史の時代区分」 ([2013-06-30-1]),「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1]),「#2669. 英語と日本語の文法史の潮流」 ([2016-08-17-1]) で紹介したが,今回は沖森 (16) による複数の区分法をみてみよう.
 | 二分法 |  古代 |  近代 |  
 | 三分法 |  古代 |  中世 |  近代 |  
 | 四分法 |  古代 |  中世 |  近世 |  近代 |  
 | 五分法 |  上代 |  中古 |  中世 |  近世 |  近代 |  
 | 六分法 |  古代前期 |  古代後期 |  中世前期 |  中世後期 |  近世 |  近代 |  
 | 七分法 |  古代前期 |  古代後期 |  中世前期 |  中世後期 |  近世前期 |  近世後期 |  近代 |  
 | 八分法 |  古墳時代,飛鳥時代,奈良時代 |  平安時代 |  院政・鎌倉時代 |  室町時代 |  江戸時代 |  明治時代 |  
 採用する時代区分の違いは,日本語史をどうとらえるかによる.二分法は,古典語が成立して崩壊する「古代」と,現代語が成立する「近代」とに分ける,大きな潮流に重点を置く立場である.三分法はその過渡期として「中世」を想定する.これは西洋史における三区分主義を模倣したものといってよいだろう(「#232. 英語史の時代区分の歴史 (1)」 (
[2009-12-15-1]) を参照).四分法も三区分法の流れを汲むといってよく,現在までに長くなりすぎた「近代」を「近世」と「近代」に再編成したものである.五分法は日本文学史でよく用いられる区分である.六分法と七分法は,四分法をもとに接頭辞「前」「後」を付したもので,きめ細かに日本語史をみる際に有用である.
 言語史における時代区分について,
periodisation の各記事で論じてきたが,どんな区分法であれ本質的には恣意的である.あくまで参照の便を図るための道具立てだ.しかし,道具立てとして採用する以上は,その時々の目的に照らして最も役立つものを選ぶべきだろう.それゆえ,各時代区分の特徴を知っておくことは重要である.
 ・ 沖森 卓也 『日本語全史』 筑摩書房〈ちくま新書〉,2017年.
 
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