標題は「#1304. アメリカ英語の「保守性」」 ([2012-11-21-1]) や colonial_lag の各記事で何度か話題にしてきた.「#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」」 ([2017-04-21-1]) で紹介した連載記事を執筆する過程で Algeo (23) を参照していたら,アメリカ(の独立戦争)とアメリカ英語の保守性を指摘する次の文章に出会った.以下に引用しておきたい.
. . . just as the British Empire was not only the greatest, but also the most enlightened and humane of colonial powers, so the American Revolution was the most conservative and least radical of revolts in its social consequences. And the linguistic consequences of the Revolution were also in many ways conservative. The colonies had begun lexical innovation early, but they were also old-fashioned and conservative in many aspects of grammar (such as the participle gotten) and pronunciation (such as the rhotacism and "flat" a in words like path), as well as in some word choices (fall for the season).
アメリカの独立という政治的出来事が多くの点で保守的だったのと同様に,アメリカ英語も多くの点で保守的にとどまった,と述べられている.アメリカ英語で早期から新語の創出が盛んだった点は認めつつも,文法,発音,語彙選択といった言語のその他の側面においては古風で保守的だったと指摘されている.
ここで Algeo はアメリカの政治と言語を比例的に結びつけ,双方ともに「保守的」と評価しているわけだが,この結びつけ方は勇み足のように思われる.この引用の前の部分で Algeo はアメリカ英語の革新的な要素に光を当てており,それとのバランスを取るつもりで,この箇所ではあえて保守性を指摘したのだろうと解釈することはできる.しかし,そうだとしても,アメリカ独立戦争とアメリカ英語が平行的に保守的であると説くためには,慎重な議論が必要なはずである.あまつさえ,その平行性を述べるのに引き合いに出されている,大英帝国の「啓蒙的で思いやりのある」性格については,なおさら自明ではない.
この一節の最後で fall (vs autumn) の語選択についても触れられているが,fall が保守的な選択の結果だったと主張するよりは,昨日の記事で説明したように「複線的思考」に基づき,語のヴァリエーションの "redistribution" の結果だったと論じるほうが適切だと考える.
・ Algeo, John. "External History." The Cambridge History of the English Language. Vol. 6. Cambridge: CUP, 2001. 1--58.
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