Stern (21) は「#1776. Ogden and Richards による言語の5つの機能」 ([2014-03-08-1]) を部分的に批判しながらも,彼らの全体的な主張には同調しつつ,言語の最も重要な機能は,ある目的・効果を達成することであると考えている.Stern は,言語の諸機能間の相互関係については未詳としながらも,この "effective function" に特別な地位を与えている.
The effective function must, I think, be the most important of the primary functions, for if, for instance, the words I am writing here are to have the intended effect on the readers, they must (1) symbolize certain referents, i. e., the topic which I am discussing; (2) express my views of it, and (3) communicate this to the readers; only if these three functions are filled, can speech (4) perform its effective function, which is thus founded on the others. (Stern 20--21)
[2014-03-08-1]の記事に示した Ogden and Richards の諸機能の分類でいえば,およそ (i) が Stern の (1) に相当し,(ii), (iii) が (2) に相当し,(iv) が (3), (4) に相当するということになろう.いずれにせよ,指示対象 (referent),話し手 (addresser),聞き手 (addressee) の言語行動に関わる3者それぞれに働きかける3機能とまとめてよいだろう.関連して,「#1070. Jakobson による言語行動に不可欠な6つの構成要素」 ([2012-04-01-1]) および「#1071. Jakobson による言語の6つの機能」 ([2012-04-02-1]) の記事を参照されたい.
3者3機能ということでいえば,Stern (21) が脚注で参照している心理学者 Karl Bühler も,上記におよそ対応する言語の3機能を唱えている.Bühler によれば,その3つとは Kundgabe "expression", Auslösung (release), Darstellung (description) である.それぞれ,Stern の "expressive", "purposive", "symbolic" 機能に相当する.
Stern にせよ Ogden and Richards にせよ Bühler にせよ,言語とは「指示対象に相当する語を複数並べ,そこに自らの思いを託しながら相手に伝え,相手を動かす」ための道具ということになる.どんな言語分析もある種の言語観に基づいているとするならば,言語の機能をどう考えるかという問題は,すべての言語分析者にとって最重要の課題といえるだろう.
より一般的に知られている言語の諸機能については「#1071. Jakobson による言語の6つの機能」 ([2012-04-02-1]) や「#523. 言語の機能と言語の変化」 ([2010-10-02-1]) を参照されたい.また,Jakobson への批判および言語の諸機能の分類への一般的な反論としては,「#1259. 「Jakobson による言語の6つの機能」への批判」 ([2012-10-07-1]) をどうぞ.
・ Stern, Gustaf. Meaning and Change of Meaning. Bloomington: Indiana UP, 1931.
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