hellog〜英語史ブログ

#923. 意味範疇による接辞の分類[affix][word_formation][morphology][polysemy]

2011-11-06

 接辞 (affix) には様々な種類がある.品詞を変える transpositional affix (or category-changing affix) もあれば,意味を変える meaning-changing affix もある.後者について意味範疇によって接辞を分類すると,主要なものは以下のようになる (Lieber 40) .

 (1) personal affixes: 典型的に動作主 (agent) を表わす -er (ex. lover, philosopher) や,典型的に受動者 (patient) を表わす -ee (ex. employee, interviewee) など.
 (2) negative and privative affixes: 否定を表わす un-, in-, non- (ex. unable, infinite, non-smoker のほか,欠性を表わす -less, de- (ex. hopeless, debug) など.
 (3) prepositional and relational affixes: 空間や時間の意味を表わす over-, out- (ex. overfill, outrun) など.
 (4) quantitative affixes: 量に関わる意味を表わす -ful, multi-, re- (ex. handful, multifaceted, reread) など.
 (5) evaluative affixes: 指小辞 (diminutive) として -let (ex. booklet) ,増大辞 (augmentative) として mega- (ex. megastore) など.前者は愛情を含意し,後者は軽蔑を含意する傾向がある.

 以上のうちのいくつかは,意味を変えるだけでなく統語範疇をも変える機能を持っていることに注意されたい( -er は動詞から名詞を,de- は名詞から動詞を派生させることができる).
 意味範疇による接辞の分類は,より詳細にもなしうる.例えば,上では動作主を表わす -er を personal affix と呼んだが,printer (印刷機), freighter (貨物船)における同接尾辞は「道具」と呼ぶのがふさわしいだろう.loaner (賃貸人), fryer (フライ用若鶏)は「受動者」,diner (食堂車)は「場所」と呼べるだろう.同じ -er という接尾辞でも実に多義的 (affixal polysemy) であり,はたしてこれを1つの範疇にくくることができるのか,基体の動詞の統語的な項構造と多義性は対応するのか,などの理論的な問題が生じている (Lieber 193--95) .

 ・ Lieber, Rochelle. Introducing Morphology. Cambridge: CUP, 2010.

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