hellog〜英語史ブログ

#741. 従属接続詞としての and[conjunction][kyng_alisaunder]

2011-05-08

 and は現代英語で最頻の接続詞である.BNC の頻度リストによると,全語彙中,堂々第4位の頻度を誇る (Frequency Sorter) .現在ではもっぱら等位接続詞 (coordinate conjunction) として機能するが,古い英語では従属接続詞 (subordinate conjunction) として,より具体的には if と同等の条件の接続詞 として用いられていたことは,あまり知られていない.例えば,and it please you と言えば if you please を意味した.
 OED では,and, conj.1 の C の項で,この用法が取りあげられている.MED では and (conj. (& adv.)) の 5 で扱われている.and if ( = if ) や and but if ( = but if ) の組み合わせで用いられることもある (Mustanoja, p. 469) .弱形の an も1600年頃に現われる.
 and のこの用法の起源は不詳である.Middle High German の unde や Old Norse の enda に対応する用法があるが,英語のものはこれらの言語からの影響というよりは独立の発達と考えるほうが妥当なようだ.後期古英語あるいは初期中英語より用いられていたが,現在は廃用となっている.中英語の用例は上記の MED のページを参照してもらうとよいが,Kyng Alisaunder から拾い集めた例が特に分かりやすいと思ったので,以下に2組を引用する(Smithers 版より.赤字は引用者.).BテキストとLテキストとでヴァージョン間比較ができ,and の語法が分かりやすい.

He wolde al Perce habbe yȝiue
And he miȝth haue had his lyue. (B 4645--46)

Y wolde Y hadde al Perce y ȝeue
Wiþ þat Y myȝte haue þy lif (L 4614--15)

And þou dude hym ouȝth bot good,
He wolde sen þine herte blood, (B 7754--55)

Hadestow don him ouȝt bote gode
He wolde seo þyn heorte blode (L 6475--76)


 2例とも,Bテキストでは問題の And が用いられているが,Lテキストでは別の接続詞あるいは倒置により条件節を表わしている.

 ・ Mustanoja, T. F. A Middle English Syntax. Helsinki: Société Néophilologique, 1960.
 ・ Smithers, G. V. ed. Kyng Alisaunder. 2 vols. EETS os 227 and 237. 1952--57.

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