hellog〜英語史ブログ

#560. 接頭辞 post-[prefix][productivity]

2010-11-08

 国立新美術館ゴッホ展に行ってきた.Vincent Van Gogh ( 1853--90 ) は画家としても作品としても世界で高い人気を誇るが,とりわけ日本人には受けるという.19世紀末,印象主義 ( Impressionism ) の時代を受けて,Paul Cézanne, Georges Seurat, Paul Gauguin とともに後期印象主義 ( Post-Impressionism ) の旗手となったオランダの誇る大画家である.
 さて,「後期印象派」は英語の Post-Impressionist の訳語として大正期からみられたが,この訳語は適切ではない.訳語としてすでに定着してしまっているが,正確には「印象派以降」と訳すべきだったろう.
 接頭辞 post- は "after, behind" を意味するラテン語 post に由来し,本来は動詞に付加されたが,早くから動詞より派生した分詞,形容詞,名詞にも付加されるようになった( 反意 before を表わす接頭辞としては pre-, ante- がある).現在ではこの接頭辞の生産性は非常に高く,意のままに合成語を作ることができる.OEDpost- (prefix) のエントリーには多数の合成語が例示されており,ざっと数えたところ700語を超える.引用例は19世紀後半から20世紀のものが圧倒しており,この接頭辞の爆発的増加が現代英語期にかけての現象であることがうかがえる.
 今年出版の OALD8 に見出し語として挙げられていた13の合成語を示そう.

post-coital, post-industrial, post-mortem, post-natal, post-natal depression, post-operative, post-paid, post-partum, post-partum depression, post-production, post-sync, post-traumatic stress disorder, post-war


 「ポスト」は日本語でもすでに接頭辞として市民権を得ている.「ポスト小泉」「ポスト構造主義」「ポスト・サンデーサイレンス」「ポスト冷戦期」「ポスト山口百恵」(=聖子ちゃん)など.
 20世紀後半の語形成や接辞の流行については[2010-06-21-1]を参照.

Referrer (Inside): [2016-11-21-1] [2010-11-09-1]

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