soup と supper は語源的におおいに関係している,と聞くと驚くかもしれない.しかし,形態を比べると,さもありなんという気がしてくるのではないか.
これらの語は遠く印欧祖語に遡り,seep 「しみ出る」,sip 「すする」,sop 「浸す」,soak 「浸す」,suck 「吸う」,sup 「すする」など,一連の「液体の浸出」を表す語と類縁関係がある.soup と supper はフランス語から英語に入ったが,英語での初例はそれぞれ1653年と1250年頃であり,時間差がある.しかし,フランス語では古くから sope と soper は名詞と動詞の関係であり,語源的・形態的な関係は一目瞭然だった.フランスの農夫たちのあいだでは夕食はスープが普通だったとされ,このコネクションにより「スープ」から「夕食」へと意味が発展したという.
フランス語では,-(e)r 語尾は動詞の不定詞を表す.不定詞は辞書の見出しにもなり,その動詞を代表する形態であると同時に,英語の不定詞の名詞的用法でもわかるとおり,動詞を名詞化する働きをもつ.したがって,古フランス語の soper は「スープを飲むこと,夕食をとること」すなわち「夕食」を意味した.たとえて言えば,to eat 「食べること」という名詞的用法の不定詞が to 付きで日本語に借用され,「トゥイート」として「食事」を意味するようになったと想像すればよい.
このように,-(e)r 語尾をもつフランス語の動詞の不定詞が名詞として英語に借用された他の例としては,cesser, detainer, dinner, merger, misnomer, remainder, surrender などがある.
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