昨日の記事[2009-07-16-1]で手話言語について言及したが,それとの関連で,先日,興味深い出来事に遭遇したので報告しよう.
地下鉄で座席に座っていたときのこと.隣の席に,男性が座った.そして,ちょうどその向かいの席に連れと思われる女性が座った.そして,二人が手話で会話を始めたのである.それ自体は珍しいことではないかも知れないが,地下鉄の騒音(特にその路線はうるさかった)のなかで,二人が音を立てずに完璧なコミュニケーションを取っていることに驚嘆した.音を立てずに即時的にコミュニケーションを取ることができるということは,新鮮な発見だった.
音を立てずに轟音のなかでコミュニケーションをとる他の方法としては,筆談や lip reading などがあり得ようが,いずれにせよ聴覚媒体でなく視覚媒体によるコミュニケーション機能の広い可能性に気づいた.手話は筆談と同様,雑音で声が聞こえない環境,あるいは静寂を保たなければならない環境においてコミュニケーションをとる際に,汎用的に利用できる「言語」ではないだろうか.
地下鉄の話はまだ続く.さらに驚いたことに,途中駅で向かいの女性の隣席が空いたのだが,私の隣の男性はその空いた席に移らなかったのである.通常は,連れとおしゃべりをするのに席を移動するだろう.だが,この二人にとっては,むしろ対面に座っていた方が互いの正面が見えて,手話の会話には都合が良かったのだろう.結局その男性は移動せず,その空いた席には別の駅で乗ってきた乗客が座ってしまった.地下鉄の対面座席は十分に視認できる距離であり,二人にとってはまさにうってつけの「おしゃべり環境」だったわけである.
この出来事からひらめきを得て,何か新しいコミュニケーション方法を開発できないだろうか.
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