
嶋田珠巳先生(明海大学)による,アイルランドの言語事情に関する書籍『英語という選択 アイルランドの今』(岩波書店,2016年)について,「#2798. 嶋田 珠巳 『英語という選択 アイルランドの今』 岩波書店,2016年.」 ([2016-12-24-1]),「#2803. アイルランド語の話者人口と使用地域」 ([2016-12-29-1]),「#2804. アイルランドにみえる母語と母国語のねじれ現象」 ([2016-12-30-1]) で参照してきた.
今回は,同著の概要をつかむために目次を挙げておきたい.
第一章 アイルランドというフィールド
I 地点
民族のことばが英語に取って替わられる
アイルランドは遠くて近い
緑のアイルランド
ほんのすこしの,国,案内
パブで耳を傾けて
その土地で感じる文化
II 自分たちのことば
アイルランドの二つの言語
アイルランド語を話しますか
母語になれない母なることば --- 言語能力と気持ちのねじれ
アイルランド語でつながる祖先
英語を手に入れた幸せと不幸せ
自分たちのことばはアイルランド語
アイルランド的なありかたのようなもの
ケルト的悲哀
III 可能性
そとに開かれるアイルランド
フィールドをもつということ
本書のたて糸,よこ糸
第二章 ことばを引き継がないという選択
I ことばを取り替えるということ
アイルランド語を捨てて英語を選んだのか
個人,コミュニティ,国レベルでの言語政策
順位づけされる言語
II 過去から現在
アイルランドに起こった言語交替
言語交替の要因
使用領域への着目
世代への着目と言語交替の社会心理
III 現在から未来
アイルランド語を守る取り組み --- 上からの政策
いま起こっている言語交替
親のものとは違う,第二言語としてのアイルランド語
アイルランド語もさまざまで
変容するアイルランド語の価値
アイルランド使用地域の存在
第三章 アイルランド語への思い,英語への思い
なまの声をきく
言語交替への思い
アイルランド語をどう見ているのか
英語をどう見ているのか
「英語」それとも「アイルランド英語」?
英語をどう見ているのか
第四章 話者の言語意識にせまる
はじめての言語調査
コミュニティに入る
フィールドで気づくこと
言語使用の背後にある話者の意識
do be 形式の言語外意味
正しさへの意識
アイルランドらしさへの意識
文法形式や語彙に対する意識
第五章 ことばのなかのアイルランドらしさ
I アイルランド英語のかたち
特有の語彙
現地の英語に溶け込むアイルランド語からの借用語
アイルランド英語に特有の表現
言語の理
文法のしくみに「個性」をみる
アイルランド目線の英語
II 時の表現
間違った英語?
独自の体系
How long are you here? の意味
独自の体系
独特の意味をもつ be after 完了
be after 完了と have 完了の使い分け
II 情報構造の表現
強調構文を手がかりに
'tis 文は分裂文か
ことばの内部で働いているしくみ
アイランド語をみれば合点がいく
見た目と中身の問題
第六章 ことばが変わること,替わること
I 言語接触
接触言語学にとってのアイルランド英語の魅力
形成と変化をどのようにみるか
文法のイノベーション
II ことばの変化と人々の気持ち
英語と自分たちのことばとの間でゆれるアイデンティティ
二言語主義の先にみえるものは
言語の必然? --- 言語の危機と英語の多様性とそれぞれの選択
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参考文献
索引
言語交替 (
language_shift) ,言語接触 (
contact),言語政策 (
language_planning) など,社会言語学の多くの話題の交差点をなすアイルランド(英)(語)に,ぜひ注目を.
・ 嶋田 珠巳 『英語という選択 アイルランドの今』 岩波書店,2016年.
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