【目的および問題意識】

20世紀後半からの本邦科学技術の進展は目覚ましく、近年は世界のトップレベルにあり続けている。この傾向は医学分野でも同様であるが、一方で、医学研究は十分に世界を先導する役割を果たしているとはいえない。例えば、臨床医学分野の主要学術雑誌に掲載された論文数は、日本が世界に占める割合は1991年~2000年の10年間を計数すると僅か0.6%を占めるに過ぎず、世界で14位である。本事業では、医学研究で本邦さらには世界を先導することができる人材の育成を目的とする。特に、20世紀の医学では国民医療の充実を目的に、医療・医学者の数的な充足が求められたが、当該目的が達成された現在では、医学分野における能力と意欲に溢れる少数の研究者による理論的・技術的ブレークスルーが求められており、本事業はその人材育成プログラムを開発し、グローバル化する医学・医療分野で世界を先導する医学者の育成を目指す。

【育てたい人材像】

医学・医療分野で、基礎的研究技法を身に付け、研究の着想方法および研究計画を経験した高校生を育成する。更には、研究室への配属・研究実施により学会発表あるいは研究論文発表を経験し、常に世界を意識した学習姿勢・研究姿勢を有する能力および意欲の高い高校生を育てる。

【取組の達成目標】

全国から選抜した8名の高校生(中高一貫校に関しては、中学3年生も排除しない)を選抜し、本事業プログラムにおいては、
①医学における基礎知識
②基礎実験能力
③情報収集・活用能力
④研究実施能力(論文化2報および学会発表5本を目標)
⑤海外との交流能力
⑥プレゼンテーション能力の取得
を目標とする。各能力開発は数値評価が困難であるが、外部および内部評価委員会の評価および個人研究指導の指導者の評価で、本プログラムが「大変に有効」あるいは「有効」が全体の80%以上に達することを目標とする。

教育プログラム

(1)研究基礎技術教室の開催
各研究室に配属される前に、効率的に研究技術を体得するために、5月の後半に、研究基礎技術教室を開催する。これにより、基本的な技術を身に付けると共に、各配属研究室の負担を軽減する。
(2)論文勉強会
本プログラムでは、1年間という短期間であるが、受講高校生の20~30%が英語論文の作成を行うことを企図している。そのため、各研究室に配属される前に、論文の検索方法、論文の収集方法、論文の読み方、および、論文読解の実践を教授する。
*なお、以上1および2で十分な成果を得られないと判断された受講生は、次の研究室への配属および個人研究は実施しない。
(3)海外大学訪問
受講生の視野を海外に広げ、自らが競争し、自らが貢献すべきは世界であることを認識して頂くために、受講生の中から選抜して、アメリカの大学および病院を訪問し、現地でのディスカッション等を体験する。また、その成果を他の高校生に波及するための報告会を別途開催する。
(4)研究室への配属および個人研究の実施
上記1および2で能力および意欲を認められた受講生は、6月より研究室に配属される。各研究室とのマッチングは実施責任者らで行う。なお、慶應義塾大学の他に、連携組織として、日本医科大学、久留米大学、福岡女子大学を挙げているが、受講生の地域性等を考慮して、これらの大学のみに限定せず、広く協力大学を募って、マッチングを行う。
(5)研究発表会・学会発表
得られた成果は、できるだけ学会等での発表を義務付ける。また、平成26年3月上旬に、個人研究の成果発表会を開催する。また、その発表については、レポート集を発行し、その後の英語論文の発表等につなげる。

この事業の全体イメージ

全体概要図


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