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シラバス・慶應義塾大学医学部化学Ⅱ

1.教育目標(GIO)

化学の秋学期講義(化学Ⅱ)では、医学および医療科学技術の基礎となる化学を、有機化学および放射線化学を中心に学ぶ。有機化学では、有機化合物の国際純正および応用化学連合(IUPAC)命名法、反応機構、本講義と並行して行われる有機化学実験で用いる有機化合物の構造を決定するための機器分析手法、および有機化合物を用いた医薬品の開発と利用(知的財産権の確立等も含めて)について概説する。また、放射線化学では、放射線の種類と放射性同位元素の性質の理解、放射線規制法令、放射線防護、放射線の医療への応用例、および今後の展開について解説する。
*本授業科目に関するお知らせおよび演習解答は、授業の中で告げるが、医学部化学教室HPでも公開します。各自留意して下さい。

GIOs:
(1)有機化学の全体像について理解する。
(2)有機化合物の国際純正および応用化学連合(IUPAC)命名法について理解する。
(3)有機化合物の合成法について理解する。
(4)分子構造の決定法、特に機器分析法について理解する。
(5)医薬品の開発と有効成分の知的財産権保護について理解する。
(6)放射線の性質について理解する。
(7)放射性同位元素について理解する。
(8)放射線の生体への影響について理解する。
(9)放射線防護について法令を含めて理解する。


2.講義予定

担当者:井上 浩義

月・日・曜日時限講実授業タイトル
9月 26日(木)2(B)・3(A)講義第 1 回 序論および酸塩基
10月 3日(木) 2(B)・3(A)講義第 2 回 有機化学機器分析Ⅰ
10月10日(木) 2(B)・3(A)講義第 3 回 有機化学機器分析Ⅱ
10月17日(木) 2(B)・3(A)講義第 4 回 アルカン・アルケン・アルキン
10月24日(木) 2(B)・3(A)講義第 5 回 芳香族化合物
10月31日(木) 2(B)・3(A)講義第 6 回 異性体
11月7日(木) 2(B)・3(A)講義第 7 回 ハロゲン化アルキル・アルデヒド・ケトン・アミン
11月14日(木) 2(B)・3(A)講義第 8 回 有機化学と医薬品Ⅰ
11月 28日(木) 2(B)・3(A)講義第 9 回 有機化学と医薬品Ⅱ
12月 5日(木) 2(B)・3(A)講義第10回 有機化学と医薬品Ⅲ
12月12日(木) 2(B)・3(A)講義第11回 放射線・放射性同位元素の基礎
12月19日(木) 2(B)・3(A)講義第12回 放射線規制法令
12月26日(木) 2(B)・3(A)講義第13回 放射線防護
1月9日(木) 2(B)・3(A)講義第14回 放射線の医学利用(概要)

上記の表と日時・内容にずれが生じることがありうる。
● 講義室:第2校舎224番教室


3.講義の内容

第1回:「序論および酸塩基」

GIO:
有機化学を理解する上で重要な酸・塩基の種々の定義について整理して理解する。また官能基の考え方についても理解する。その後,有機化学の医学での利用について概要を理解する。

SBOs:
(1)有機化学が生命現象の解明や医療に利用できることを説明できる。
(2)酸・塩基の種々の定義を比較・説明できる。
(3)官能基にどのようなものがあるのかを説明できる。
(4)電磁波の区分と分子分光学との関連性について説明できる。

第2回:「有機化学分析Ⅰ」

GIO:
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法および赤外(IR)スペクトル法の原理と有機化合物の定量および構造決定への応用について理解する。

SBOs:
(1)HPLC分析法の原理を説明できる。
(2) IRスペクトル法の原理を説明できる。
(3)IRスペクトルから有機化合物における官能基の存否を推定できる。

第3回:「有機化学分析Ⅱ」

GIO:
質量分析(MS)および核磁気共鳴(NMR)スペクトル法の原理と有機化合物の定量および構造決定への応用について理解する。

SBOs:
(1)質量分析法の原理を説明できる。
(2)NMRスペクトル法の原理を説明できる。
(3)NMRスペクトルから有機化合物の構造決定ができる。

第4回:「アルカン・アルケン・アルキン」

GIO:
アルカン・アルケン・アルキンの構造,命名法,性質について理解する。

SBOs:
(1)アルカン・アルケン・アルキンをIUPAC命名法により命名できる。
(2)アルカン・アルケン・アルキンの異性体について説明できる。
(3)アルカン・アルケン・アルキンの性質について説明できる。
(4)アルケン・アルキンの反応について説明できる。
(5)アルケンの製法について説明できる。

第5回:「芳香族化合物」

GIO:
芳香族化合物の構造,命名法,反応について理解する。

SBOs:
(1)芳香族化合物をIUPAC命名法により命名できる。
(2)芳香族化合物の反応について説明できる。
(3)芳香族化合物の薬物への応用について概要を理解する。

第6回:「異性体」

GIO:
異性体の種類および命名法を理解すると共に、医薬品において生物作用が異なることがあることを学ぶ。

SBOs:
(1)キラリティー,鏡像異性体,光学活性について説明できる。
(2)ジアステレオマー,メソ化合物,ラセミ体について説明できる。
(3)異性体を命名できる。
(4)異性体によって医薬品の作用が異なることを例を挙げて説明できる。

第7回:「ハロゲン化アルキル・アルデヒド・ケトン・アミン」

GIO:
ハロゲン化アルキルの命名法,製法,反応について理解する。

SBOs:
(1)ハロゲン化アルキル・アルデヒド・ケトン・アミンをIUPAC命名法により命名できる。
(2)ハロゲン化アルキルの製法(反応)について説明できる。
(3)ハロゲン化することによって変化する性質について説明できる。
(4)アルデヒド,ケトンの反応について説明できる。
(5)アミンの合成法およびアミンに特徴的な反応を説明できる。

第8回:「有機化学と医薬品Ⅰ」

GIO:
医薬品としての有機物について概要を理解する。

SBOs:
(1)医薬品の分類を説明できる。
(2)医薬品の剤形について説明できる。
(3)医薬品の投与経路について説明できる。
(4)医薬品のADMEについて説明できる。

第9回:「有機化学と医薬品Ⅱ」

GIO:
有機物を医薬品として開発するステップについて概要を理解する。特に、重篤事象について理解する。

SBOs:
(1)有機物からの医薬品スクリーニング方法について概説できる。
(2) 有機物の医薬品開発について概説できる。
(3)治験について概説できる。
(4)医薬品の重篤事象について概説できる。

第10回:「有機化学と医薬品Ⅲ」

GIO:
新規有機物の発見とその知的財産権保護について理解する。

SBOs:
(1)知的財産権(特許,実用新案,意匠,商標)について概説できる。
(2)知的財産権保護の方法について概説できる。
(3)知的財産権侵害の概念について理解できる。

第11回:「放射線・放射性同位元素の基礎」

GIO:
人類が利用できる放射線の種類とその基本的な性質について理解する。また、放射性同位元素の性質について理解する。

SBOs:
(1)原子構造と放射線の関係について概要を理解する。
(2)放射線の種類についてその発生源を含めて説明できる。
(3)放射線で利用される単位について説明できる。
(4)放射線の作用について概要を説明できる。
(5)放射性同位元素の壊変形式と放出される放射線について説明できる。
(6)放射性同位元素の半減期について,計算式と導出方法について説明できる。
(7)放射性同位元素の性質に基づく保管方法および廃棄方法について概要を説明できる。

第12回:「放射線規制法令」

GIO:
放射線および放射性同位元素を利用する場合に関連する法令について概要を理解する。

SBOs:
(1)原子力基本法の立法精神について説明できる。
(2)医療法施行規則・放射線障害防止法について、概要を説明できる。
(3)医学部・病院で放射線を利用する場合の決まりごとについて概要を説明できる。

第13回:「放射線防護」

GIO:
放射線の生体への影響を理解し、放射線を防護する方法について理解する。

SBOs:
(1)放射線によってフリーラジカル等が発生することを説明できる。
(2)放射線の細胞・遺伝子への影響について説明できる。
(3)生体の放射線影響からの回復について説明できる。
(4)放射線の身体的影響および遺伝的影響について説明できる。
(5)放射線の防護方法について概要を説明できる。

第14回:「放射線の医学利用(概説)」

GIO:
放射線が医学研究から,医療(診断・治療)までどのように利用されているかの概要を理解する。

SBOs:
(1)放射線の医学研究利用について,概要を説明できる。
(2)放射線の疾病診断利用について,概要を説明できる。
(3)放射線の疾病治療利用について,概要を説明できる。

第15回:「特別講義」

GIO:
国際的に活躍する医師等による講演を行う。

SBOs:
医療人としての将来の目的を明確にすると共に、在学中の心得を学び取る。


4.教科書・参考書

教科書:

(1)『知りたい!医療放射線』井上浩義他編 慧文社 2008年 ISBN:978-4-905849-92-6

(2)『最先端医療機器がよくわかる本』井上浩義監修 アーク出版 2013年 ISBN:978-4860591205

*必要に応じてプリントを配布する。

参考書:

(1)有機化学概説 第6版 J.マクマリー 東京化学同人
(2)有機化合物のスペクトルによる同定法 R.M.シルバースタイン,F.X.ウェブスター 東京化学同人
(3)有機化合物への吸収スペクトルの応用 J.R.ダイヤー 東京化学同人


5.評価方法

出席および期末試験により評価する。