女性研究者はどんな目にあっているか?

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日本の女性研究者は、順調に研究者人生を歩んでいるのでしょうか?
男性と比べていちじるしく不利だということはないでしょうか?
「女性は研究に向いていないから教授にはなれない」と思っている人の
ために、まず、優秀な女性でもその研究者人生は順風満帆からほど遠い、ということを
見てみます。"My Life"と題するこの本は、猿橋賞を受賞した20人の女性研究者の
自伝を集めたものです。猿橋賞を受賞するくらいですから、とびきり優秀な女性
科学者の方たちです。それなのに、研究者人生はめぐまれず、下積みの助手の期間が
男性と比べて異常に長い人が多いです。つまり優秀な女性でも、教授になることは
難しいということが統計的にわかります。
 My Life -- Twenty Japanese Women Scientists (書評) 科学2001年12月号掲載 加藤万里子評


では、実際にどんなことがあるのでしょうか?上記の本には何があったか具体的には
書いてありません。私の知っている女性研究者の人たちも、本当に考えられるありと
あらゆるいじめやハラスメントを受けています。女性というだけで、そんなに辞めさせ
たいものなのでしょうか?私の実感では、優秀な女性ほどいじめられ、辞めろ圧力が
かかっています。どのようなことが起こっているのか、実名でご自分の体験を書いて
いる方は少ないのですが、以下を御覧下さい。

若桑みどりさん(ジェンダー学:1935-2007)

『私は18年間、大学の上司にあたる男性から徹底したいじめを受けた経験がある。 国立大学の教員は国家公務員だから、給与その他の男女差別は一切ない。死ぬほど 辛かったのは制度でも環境でもない。ひとりの男性のいじめである。というよりは、 そのひとりによって支配されていた男性集団というべきだろう。たとえば、この 男性は給料日に、私に向かって「給料の二重どりをする奴」と言った。夫も給料を とっているから「二重どり」だというわけだ。それからこうも言った。「あんたの ように子どもをほったらかしにして外にいる母親の子どもはろくなものにならない」。 子どものことを言ったこのことばだけは、いまだに許せない。働く女性の致命傷を 彼はよく知っていて狙ったのだ。そればかりか、重要な情報はこちらに言わない。 絶対に昇進されない。重要な委員につけない。上層部に悪口をいいたてる。とにかく 職場で起こるあらゆる種類の嫌がらせだ。つまるところこの男性中心主義者は、 「女ごときが大学にいる」ことが許せなかったので、いじめれば退職すると信じて 確信をもってやっていたのである。もう彼も退官したし時効でも何十年も前のこと だから、同じことがほうぼうで起こっているにちがいないので、紙上告発しておこう。』 出典: 「お姫様とジェンダー -- アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」 ちくま新書415 若桑みどり著 2003年

河内和子さん(女性学)

『あなたは子どもを産んでいないので、義務をはたしていない』 今は取り壊されて建物がないが、慶應大学日吉キャンパス新研1F教員談話室にて 慶應大学理工学部所属の星野シンゴ(男性、論理学担当)が河内和子さん(経済学部所属 で英語担当)に面とむかって発言したのを加藤万里子さん(理工学部)が目撃している。 ちなみに、この星野さんは河内和子さんとは対称的に、ほとんど学問的業績がない。 大学教員として、どちらが義務を果たしていないのか、自明だろう。業績のない男性が 業績のある女性を攻撃する時の唯一のよりどころは、男性優位社会の価値観に頼る しかないのだろう。 ちなみにこの星野はタバコを吸う。公共の場所でタバコをすうのを加藤万里子に とがめられ、それ以来、加藤万里子とは一切口をきかなかった。(このような態度が まかり通るとは大学の世界は狭い) 後日、この星野某が加藤の教授昇格を審査する 委員会メンバーの一人となる。結果は押して知るべし。

天文学の世界で見聞きしたこと:森本雅樹さん(1932-2010)

森本雅樹さんは電波天文学のくさわけで、電波天文学だけでなく日本の天文学の 発展において大きな役割をはたした方です。革新的な立場からの発言と面白い キャラクターで多くの人々から親しまれていました。 ときどきエッチな事をいう 面白いおじさん、というのが後自分で意識されていた立ち位置だったようです。 戦前から昭和にかけては、男性優位な社会の中で、たいしてとがめられる 言動ではないと思われる程度のものだったのでしょう。 でも日本でもセクシュアル・ハラスメントという概念が浸透し、女性の置かれて いる立場について多くの人が考えはじめてくるようになると、森本さんの言動は セクハラそのものでした。 たとえば天文学会の懇親会は若手も年配の人も多く参加し、立ち話がはずみます。 自然と話をするのは小さな人の輪で、それを渡りあるいて、旧い友達とひさしぶりに 話したり、そこで新しくいろいろな人と知りあうのは学問上も大切です。 森本さんはそういう小さなグループを挨拶しまわっているのが常でしたが、 女性(天文学界に女性は少ない)をみつけると、かならずコップを近付けて 乾杯の挨拶をします。コップの上側どうしをあわせてカチンとならし「くちびるー」 コップの下側を合わせて「おしりー」。笑いながらなので、嫌がらせとは 反発できないのですが、学会や研究会の懇親会で森本さんにあうと、かならず これでした。聞いたら外国でも同じようなことをやっているようです。セリフは 違うかもしれませんが。 慶應大学の文系の先生たちのグループで野辺山に見学にいったときのことです。 電波望遠鏡を見学し、森本さんの手作りの料理(すてきな大皿に盛ってあった)をたのしみ 会話も楽しんだのですが、そこで女性たちひとりひとりを追い回しました。 女性たちはきゃーきゃー言って逃げ回ったのですが、ひとりひとりにきわどいセリフを 言うのです。わたしはそこまでひどいことは言われませんでしたが、ある女性は 追いかけられて「お◯こやらせろ」と言われました。 野辺山見学は楽しかったし勉強になったのでよかったのですが、そのことだけが尾を引き ます。後日セクハラについて森本さんに手紙を出しました。 森本さんからは、おわびと本が私と彼女に送られてきましたが、手紙には「自覚はあるが 直らない」とありました。もう20年以上前のことですので、いまさらこれについては 言うことはありませんが、森本さんの言動の影響は大きかったです。日本の天文学者には こういう言動がゆるされるのだ、面白いと思われるのだと勘違いする人も少なからずいました。 ある研究所の部屋(一般の人も入れる)に、水着の女の子のポスターを貼って訪問者に みせびらかしたり、男性側からみてエッチで面白いと思われそうなジョークを言ったり書いたり。 あるとき、天文学会から森本さんを除名できないのかと聞いたことがあります。 まー無理ですね。。。と自分も思っていました。スカート覗きとか、ストーカーなどの 犯罪行為だったら除名できるでしょうが、環境型セクハラで組織を動かすのはなかなか 難しいです。

加藤万里子さん(天文学)

1995年2月大学入試の答案採点会場で、北條彰宏(同僚のドイツ語教員)から、個人攻撃 として、会場全員の前で、低劣でひわいなセクシュアル・ハラスメントの発言を繰り返し 浴びる(もちろん採点しながら)。後日上司となる主任教授の村瀬晃(カウンセリング心理学が 専門だが研究論文は書いていない)に相談したところ、逆に加藤の方が大人げない態度であると 執拗に非難したメールを繰り返しうけ取る(メールのやりとりは印刷して60ページにも およぶ)。日吉の同じ組織のメンバーは誰一人として私の味方はせず、逆に私を責める発言を する者も何人もいた。加藤が歩けなくなっても、誰も「どうしたの?大丈夫?」とか 「はやく元気になってね」といった、ふつうに同僚にかけるだろう言葉は、誰一人として 言わなかった。 それに続く一連のアカデミック・ハラスメントにより、心身の健康を損ない、休職。 復職しても職場(理工学部)の環境は全く良くならず、心身の健康がますます悪化し、 杖をついていても転ぶ状態となる。教授への昇格を申請をするが、業績は十分なため 「業績以外の理由」「協調性・寛容性がない」(つまりセクハラを言いたてた、内部告発した) との理由で4年間連続して昇格を拒否された。 これは報復人事だと加藤が発言したところ、その発言自体が次の教授昇格却下の理由となった。 4回連続(つまり4年間)の昇格拒否のうち、昇格を拒否する理由は、主任が戸張から金田一に 変わると、正反対の理由に変わった。 これら一連のできごとの概略は岩波書店発行の雑誌「科学」2002,72,410『大学における まっとうな「男女関係」のあり方』に記載されている。なお、この記事の中では匿名の加害者と 伏せられていた主任教授の一人が、わざわざ実名で次号で反論した(村瀬晃:科学、2002,72,1309: (この文章中で「匿名の加害者」に該当する 村瀬晃 氏が、弁護士を通じて証明郵便を加藤に 送りつけ、加藤が科学の記事を引用する場合には必ず「加害者」村瀬晃 の反論も引用する ようにと主張したため、ここで 村瀬晃 の名前を出すことになってしまった。 なお村瀬晃はこの科学の「反論」のコピーを日本学術会議のシンポジウムで「わたしがムラセ です」と言いながら参加者に渡していた(この会議はこの反論の内容とは関係ないが、講演者の ひとりが加藤だった)。この会場には性被害の裁判の原告側のひとたちも参加していたため、写真 撮影は禁止になっていたにもかかわらず、ムラセは会場にビデオを持ち込み、会場の後ろから 撮影をはじめて、参加者からクレームが出るなど、会議妨害となる行為をした。 また、事前に「加藤は講演者としてふさわしくない」との文書を主催者側の何人かに送った。 このような行為は村瀬晃が慶應義塾大学で長年心理カウンセラーをつとめたにもかかわらず、 セクハラ被害に対して全く理解がないことを読者に示していると思われる。) (注:「加害者」の反論をこのように雑誌に印刷してきちんと記録しておくことは、 女性学の研究にとっても、加害者心理の研究材料としても有用であろう。じっさいに、ある大学 の修士論文の研究材料として使われたこともあると聞く。) このように心理カウンセラーとして信頼できるはずの主任教授からの言動もあり、加藤は心身の 健康を害し、研究者として実りあるはずの8年間にわたる時期を失い、集注力の低下に悩み つづけ、研究者として復活できるのかという、研究者として最大の恐怖におののいた。 慶應大学がその後もずっと村瀬晃を学生むけのカウンセリング担当者にしておいたのは 不適切であろう。 業績比較: 加藤は天文学者として新星の理論の提唱者としても国際的に有名である。 「加害者」の北條彰宏、村瀬晃の学問的業績はない。 これまで、アカデミック・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントはほとんどの場合、 公になりませんでした。たとえ事件が大学や研究機関により公表されても、関係者名は 匿名だったり、あいまいにされてきています。被害者が名前や事件を公表することを決意 しても、加害者の名前を公表しないよう、最大限の圧力がかけられてきました。加害者名が あいまいなままでは、今後また同様の事件を起こす可能性が危惧されます。それなのに、 匿名にしたがるのは、被害者を守るという口実の他に、それよりもっと大きな理由があります。 それは、加害者を守り、それにより、管理責任者に管理責任が問われないようにする、また、 男性優位社会の構造が脅かされないですむというものです。 実際上記の加藤さんの例では、本人が公表を強くのぞんだにもかからわず、慶應大学 理工学部の調査委員会は、加害者の名前を出さないように加藤さんに強制しました。これは 本人が強くのぞんでいた休職をみとめることとひきかえる交換条件のように言われました。 口外すべきでない理由は、加害者1の将来(昇格)を考えて、というものでした。しかし 加害者1は自分が助教授に昇格したとたんに自分はやっていないと主張しています。 (同僚のKumとHagも、北條の味方をして、セクハラについて「そういう事実はありません」と 書き、公的書類に自筆サインをしました。(実際には発言を聞いたという証言あり)。 従って加害者北條の名前を口外しないままでいる理由はありませんね。むしろ次の加害を ふせぐためには、事実を公表すべきです。 なお、加藤万里子さんは4度目の教授昇格を申請した時、金田一真澄主任教授(当時)から 「こんどは昇格させるから」と話しかけられ「私は自分の実例を実名で公表します。ダメなら 昇格を認めないで下さい」と言い返し、あーはいはい。と公表についての快諾をもらっています。 職場ぐるみで事件を隠そうとし、被害者をだまらせようという姿勢では、もし加害者が次に 同じようなことを学生にしたら、教育機関としての大学の責任はどうとればいいのでしょうか。 教育機関としては加害者の名前はすみやかに公表し、次の被害をふせいてほしいと考えます。 また、被害者の健康回復と名誉回復も必要です。

わたしはどのように健康をとりもどしたか