hellog〜英語史ブログ

#4377. 擬音語における英語の /z/ と日本語の /b/[onomatopoeia][phonetics][phonaesthesia][sound_symbolism][arbitrariness][khelf_hel_intro_2021]

2021-04-21

 「英語史導入企画2021」の一環として昨日学部ゼミ生より提供されたされたのは「MAZDA Zoom-Zoom スタジアムの Zoom って何」という,非常に身近に感じられる話題.擬音語やオノマトペ (onomatopoeia) に関心がある向きには「へぇ,なるほど」と読めるコンテンツだと思います.
 コンテンツ内で詳述されているとおり,車がエンジンを吹かして疾走する音は日本語では「ブーン」辺りが一般的ですが,英語では zoom などとなるわけですね./z/ と /b/ は子音として調音点も調音様式も異なっており,普通は結びつかない2音だと思います.英語耳と日本語耳とではかなりの差があるということでしょうか.(別の学生より,zip (ビュッ)の例も挙がってきました.)
 ここで思い出したのが,以前私が書いた「#4196. なぜ英語でいびきは zzz なのですか?」 ([2020-10-22-1]) です.日本語のいびきの音「グーグー」に対して,英語では zzz と発音・表記されることはよく知られています.しかし,zzz は本来はいびきの音というよりも虫の羽音を表わす擬音語としてスタートしました.日本語で虫の羽音といえば「ブーン」や「ブンブン」が典型だと思いますが,ここでも英語の /z/ と日本語の /b/ が対応していることになりますね.英語耳と日本語耳はおおいに違っていそうですが,その違い方にはパターンがあるのかもしれません.
 一般に言語学では,オノマトペは言語の恣意性 (arbitrariness) の反例を提供するといわれます.これは,言語が異なってもそこそこ似てくるものだということを含意しています.しかし,上記の日英両言語の対応例をみていると,だいぶん違うなあという印象を抱きますね.「#3850. 英語の動物の鳴き声」 ([2019-11-11-1]) なども日英語を比べてみると,いろいろと発見があると思います.

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