hellog〜英語史ブログ

#3388. 単語:語彙 = 一人:世界[lexicology]

2018-08-06

 前日の「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1]) の講座では,イントロとして英語語彙史について概説した.そのときに各単語を一人の人間にたとえ,語彙を人間の集まる世界にたとえた.その心は,次のようなものだ.
 一人ひとりの人間は,たままた2018年の今日という日に生きて暮らしている.それぞれに個性があり,ユニークな人生があり,ルーツがある.このような人々が偶然に集まって,70億人以上からなる人間社会を構成しており,世界を成り立たせているのだ.とはいっても,皆が互いに知り合っているわけではなく,むしろ各人が人生の間に付き合える人の数は限られている.また,人間は生まれては死ぬというサイクルを日々繰り返しているため,昨日と今日と明日とでは社会の構成員はそれぞれ若干異なる.世界は刻々と変化しているのである.
 一つひとつの単語(英単語ということにする)は,たままた2018年の今日という日に現役の単語として用いられている.それぞれに個性があり,ユニークな歴史があり,語源がある.このような単語が偶然に集まって,数百万語からなる英語語彙を構成しており,英語を成り立たせているのだ.とはいっても,すべての単語が互いに交流しているわけではなく,むしろ各単語が共起する単語は限定的である.また,単語は生まれては死ぬというサイクルを日々繰り返しているため,昨日と今日と明日とでは語彙の構成員はそれぞれ若干異なる.英語は刻々と変化しているのである.
 今日偶然に用いられている(あるいは用いられ得る)英単語の集合は「今日の英語語彙」であり,それは短い一時の存在である.明日までには単語の出入りが多少なりともあるため,「今日の英語語彙」とは異なる「明日の英語語彙」が生まれているだろう.否,一日という時間間隔では広すぎるかもしれず,時間,分,秒などという時間間隔でとらえるべき問題かもしれない.語彙はこの瞬間にも変化しているのだ.ちょうど人間世界がこの瞬間に変化しているように.

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