hellog〜英語史ブログ

#709. thoughalthough の語法の差[conjunction]

2011-04-06

 従属接続詞 thoughalthough の語法の主な違いは,後者が形式張った語として文語で用いられる傾向があるという点だ.Huddleston and Pullum (736) では,"Although and though are alternants, the latter slightly more informal." とある.『ランダムハウス英語辞典』の語法解説によると,他にも各語の語法に次のような特徴や傾向が見られるという.

 (1) 意味の上ではほぼ同義であるが though のほうがはるかに普通の語で,although はやや文語的.
 (2) It's expensive, though. 「でも高いよ」のような口語的な副詞用法は although にはない.
 (3) as though, even though の though の代わりに although を用いることはない.ただし,文頭では Although it is expensive. (けど,やっぱり高いね)のような用法が時として用いられる.
 (4) young though he is (若いとはいえ)のような構文で although は用いない.
 (5) 主節に先行する節を導くとき,(仮定ではなく)決まった事実を述べる節などでは although のほうを用いる傾向がある.


 Mizuno (41--42) によると,両語の特徴の比較研究は意味論,語用論,談話機能の観点から様々になされてきた.Mizuno は,(al)though に導かれる従属節が主節に先行するか後続するかという統語的な観点に,意味区分 ( standard concessive, rhetorical concessive, contrast, rectifying concessive ) を掛け合わせて,COCA ( Corpus of Contemporary American English ) の fiction と newspaper articles から用例を取り出して分析した.
 形式張りの度合い,主節との位置関係,意味区分などによって,現代英語における thoughalthough の語法の差があることは種々の研究によって明らかにされているが,この差がいかにして生じてきたかという歴史的な観点からの研究はあまりないのではないか.
 歴史的,形態的には,althoughthough に強意の副詞 all が付加された複合語である.現代英語の "even though" や "even if" のように譲歩や仮定を強める表現として中英語では "all though", "all if", "all be it" ( PDE "albeit" ) に相当するものがあったが,位置が前後した "though all"' や "if all" に相当する表現もあった ( OED, "all" 10c ) .(接続詞への "all" の付加は中英語では普通のことであり,[2011-03-21-1]の記事で取り上げた also もその1例である.)OED の記述によると,although はこのように本来は though の強めだったが,1400年までには強意が失われて though の交替形にすぎなくなり,綴字としても1語に綴られるようになった.
 しかし,現代英語では,上に述べたように両語の語法の差は確かにあり,though の単なる交替形と捉えるだけでは不十分である.この差に歴史的な側面があるとすれば(恐らくあると思われるが),OED の "practically only a variant" という記述は短絡的ということになるだろう.統語,意味,使用域 ( register ) などが関わり,おもしろい英語史の研究対象になるかもしれない.

 ・ Mizuno, Yoko. "A Quantitative Analysis of Although and Though Clauses: Their Commonalities and Differences." Studies in English Literature. Regional Branches Combined Issue. Vol. 3 (2011): 47--66. (As Hokkaido Review of English Literature 55 (2010): 41--60.)
 ・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.

Referrer (Inside): [2011-04-10-1] [2011-04-07-1]

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