学術アウトリーチに関するキーワードを語源で読み解くシリーズ.昨日の記事「#6358. content 「中身」 --- hel活コンテンツを生み出していくことについて」 ([2026-09-23-1]) で,英単語 content の語源をたどるなかで,ラテン語動詞 tenēre 「持つ,保つ」に行き着いた.今日はこの tenēre つながりで,もう1つの基本語 continue を取り上げたい.
continue 「続く;継続する」は,同語義のラテン語動詞 continuāre に由来し,フランス語を経由して中英語に借用された語である.このラテン語動詞自体は,より基本的な動詞の過去分詞に基づく派生物であり,おおもとの動詞は continēre (昨日の content の記事を参照),その過去分詞は continuus である.つまり,少しく追加的な派生を挟むものの,昨日取り上げた content/contain と,本日注目している continue とは同根語なのである.実際,『英語語源辞典』によると,14--16世紀においては,continue と contain は,意味はだいぶん異なるように思われるが,しばしば混同されたという.
continue は,英語に入ってきた当初より「続く;継続する」の意味を持っていた.その点では,中英語期であれ現代であれ,日本語としては「継続する」と翻訳・解釈しておいてかまわない.しかし,ラテン語の原義まで意識すると,ラ・仏・英語に脈々と受け継がれてきた continue の継続観と,日本語の「続く」の継続観とはだいぶん異なっているように思われる.
日本語の「続く;継続する」は,一度始めた物事を途中で中断せずに長らくつなげていくという語感が強い.さらに現代的な価値観を含めるのであれば,ただ続けるのではなく,常に刷新しながら再生していくという進歩的な語感すらある.日本の諺「継続は力なり」は,このような語感,あるいは道徳観の上に成立しているといってよいのではないか.
ところが,ラテン語の continuāre なり,さらに基本的な continēre なりは,どちらかというと原義は「持ちこたえる」に近い.変わらず保ち続ける,といった語感だ.
「続ける」というと,つい何か新しいことを積み重ねながら前進するというイメージを抱きがちだ.特に現代のような変化の時代においては,そのままの持続では足りず,進化しながら継続していくことが重要だと叫ばれる(この考え方は現代日本のビジネス書かぶれかもしれないが).しかし,ラ・仏・英語の continue の語源が伝えるのは,昨日の記事で述べたように,あくまで「雑多な物をバラバラにならないように容器の中にとどめ置く」という発想である.
英語史のアウトリーチ活動を何年も「続けて」きたが,振り返ってみれば,日々新しいことを付け加えようと努めてきた側面はあるものの,それ以上に重要なこととして,「英語史はおもしろい」という1つの軸に基づいて発信することを,途切れさせずに「持ちこたえる」営みだったようにも思う.
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