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#6357. 語彙の横の広がりや語順にも注目した出題 --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第18弾[note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][word_order][synonym][voicy][heldio]

2026-09-22



 語源というと,1つの単語の来歴をひたすら遡っていく「縦」の探究をイメージしがちです.しかし,意味に注目した類義語の関係など,語彙の「横」の広がりに目を向けることでも,英単語のおもしろさは十分に味わえます.そんな視点を存分に盛り込んだのが,sorami さんによる「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズの第18弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#18~train/king/人/語順~」です.9月19日に公開された新作を紹介しましょう.
 まずは train, coach, bus という身近な乗り物の名前をめぐる出題です.単語ごとの語源を丁寧に追うだけでなく,coachtrain がそれぞれ別の経路をたどりながら,現代英語ではどちらも「指導者,コーチ」という意味へと収斂していく様子が示されており,語源の縦の深掘りに終始しない,語彙の横の広がりに注目した構成になっています.単語どうしを線ではなく面で捉える視点を養ってくれる好例です.
 続くのは,king にまつわる問題です.「○○の王様」を意味する比喩表現から始まり,さらに視野を広げて,英語,フランス語,ドイツ語など複数の言語における王の名前の対応関係へと話題が及びます.同じ人物を指す名前が言語ごとにどのように姿を変えるのか,という対照言語学的な視点は,中学生にとっても新鮮な驚きとなりますね.
 さらに,person, people, man, human という「人」を表す複数の英単語を比較する問題も用意されています.似たような意味をもつ単語がなぜこれほど複数併存しているのか,その背景には借用の重なりという英語語彙史ならではの事情が潜んでいます.語彙どうしの意味の守備範囲の違いを見極めさせる出題です.
 そして今回最後に控えているのは語順の問題です.世界の諸言語を,主語・動詞・目的語の並べ方によって類型的に比較するという,もはや単なる「英語語源クイズ」の枠には収まらない内容にまで踏み込んでいます.
 英語史において語順に関する話題は最重要テーマの1つです.現代英語は語順が厳格に固定された言語ですが,古英語期には名詞の格変化が豊かだったため,語順は比較的自由でした.屈折語尾が衰退する過程で語順そのものが文法機能を担うようになり,現代のような固定語順が確立していったのです.このあたりの語順をめぐるダイナミックな変化については,拙著英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか(NHK出版)の第1章第1節でも詳しく解説しています.今回のクイズと合わせてお読みください,「英語のなぜ」の背景にある歴史のロマンがより立体的に見えてくるはずです.
 今回もまたまた,作者の sorami さん自ら「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALT の先生を巻き込むのもありですね!」と呼びかけてくださっています.pdf 形式の印刷用資料も用意されていますので,英語の教材として学校の授業やサークルなどですぐにでも活用できます.
 sorami さんのクイズ・シリーズの主な典拠となっているのは,刊行から1年3ヶ月ほどが経つ『英語語源ハンドブック』(研究社)です.今年の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ版 (iOS) も発売されていますので,ぜひこちらよりチェックしてみてください.


 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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