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hellog〜英語史ブログ

堀田隆一(ほったりゅういち)による,英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログです(note のプロフィールはこちら)."History of the English Language Blog" ということで,略して "hellog".英語史と関連する英語学・言語学一般の話題も扱っています.本ブログで紹介・推薦する書籍などについて,特別に表記しない限り,すべて自主的な言及です.また,堀田は Amazon のアソシエイトとして適格販売により収入を得ています.

まずは,
  1. 英語史の学び始め/続けには,まず以下の記事からスタート!
  2. アクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事
  3. 英語に関する素朴な疑問に関する記事群
  4. 全記事の標題の一覧 (Archives)
  5. 音声コンテンツ一覧 (heldio & hellog-radio)
  6. Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」(heldio)
  7. 知識共有サービス「Mond」での,英語に関する素朴な疑問への回答
  8. 慶應英語史フォーラム (khelf) のツイッターアカウント @khelf_keio
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お知らせ Voicy でお届けしている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の Video Podcast 版を開始しました.Spotify より,同名の Podcast チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」として視聴できます.フォローをよろしくお願いします.最新回はコチラです↓ 2025/03/13(Thu)

お知らせ 2025年2月28日に,私の所属する慶應義塾大学の 公式 YouTube チャンネル「慶應義塾 Keio University」内の「研究者紹介動画」というシリーズの1回として「英語史は「英語の歴史」というよりも「英語と歴史」」慶應義塾大学文学部・堀田隆一教授」が公開されました.4分22秒ほどの公式動画です.2025/03/01(Sat)

お知らせ 2025年3月15日(土)17:30--19:00,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の最終回となる第12回「勘違いから生まれた英単語」が開講されます.ご関心のある方は,リンク先よりお申し込みください.2025/02/26(Wed)

お知らせ 2024年度,白水社の月刊誌『ふらんす』に「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで連載記事を寄稿しています.2月20日に刊行された2月号に連載第12弾(最終回)が掲載されています.詳しくは hellog の関連記事「#5785. フランス語に入った英単語 --- 月刊『ふらんす』の連載記事第12弾(最終回)」をご覧ください.2025/03/01(Sat)

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お知らせ 2024年12月30日に khelf による『英語史新聞』第11号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.hellog のこちらの記事,および heldio のこちらの配信回でも第11号公開についてお知らせしています.公開後は khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報をお伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2025/01/03(Fri)

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お知らせ ヘルメイト有志によるhel活を紹介する月刊 Helvillian 2025年2月号が1月28日にウェブ公開されています.こちらよりご覧ください.2025/01/28(Tue)

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お知らせ 新年度2024年の4月より khelf による「英語史コンテンツ50+」が始まっています.休日を除く毎日,khelf メンバーより英語史の話題が1つ上がってきます).日々,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも関連情報を発信しています.2024/04/19(Fri)

お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語・言語に関する素朴な疑問に回答しています.最新の質問&回答はこちらよりご覧ください.2024/09/30(Mon)

Mond Latest

お知らせ 2023年7月より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを展開しています.Baugh and Cable の A History of the English Language (6th ed.) を1回1セクションずつ精読していくというシリーズです.週に1,2回程度のペースで続けています.有料配信ですが冒頭チャプターは試聴可となっていますので,ぜひ聴いてみてください.バックナンバー一覧はこちらの記事よりどうぞ.2024/02/09(Fri)

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お知らせ 2022年2月26日に,同僚の井上逸兵さんと YouTube チャンネル「いのほた言語学チャンネル(旧:井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル)」を始めています.毎週(水)(日)の午後6時に更新予定です.チャンネルの趣旨としては,こちらの hellog 記事あるいは Voicy でのアナウンスをご一読・ご視聴ください.直下(↓)は最新の YouTube 放送となります.本ブログの関連記事もお読みください.2022/03/10(Thu)

お知らせ 2024年7月より,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の再放送という趣旨で,こちらの YouTube にて日々配信しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2024/08/10(Sat)

お知らせ 2025年3月6日より,heldio の前身である「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) として2020--2021年に配信していた62回の配信を,こちらの YouTube にて再放送しています.直下(↓)は最新公開の回となります.2025/03/17(Mon)

お知らせ 2021年6月2日より,英語史の音声コンテンツを配信する 「英語の語源が身につくラジオ」(通称 heldio)を始めています.本ブログの姉妹版という位置づけで,音声配信プラットフォーム Voicy を通じて,英語史に関する音声コンテンツを提供しています.企画の趣旨として,こちらの hellog 記事をご一読ください.直下(↓)は最新の Voicy 放送となります.2024/07/20(Sat)

お知らせ 2023年6月2日より,上記 heldio にプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) が加わりました.毎週火木土の18:00よりお届けしています.helwa は有料配信となりますが,開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新の helwa 放送となります.2023/09/09(Sat)

お知らせ 2023年7月17日より,Voicy heldio の有料配信として「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズを開始しています(各回ともにウェブブラウザ経由で200円です).毎週1,2回の配信を通じて,英語で書かれた英語史の名著を1回1セクションずつ精読解説していきながら,内容についても英語史の専門的な観点から縦横無尽にコメントしていきます.3ヶ月続けて,参加メンバーも徐々に増えてきています.開設趣旨としてこちらの hellog 記事をお読みください.直下(↓)は最新のシリーズ配信回となります.2023/10/22(Sun)

お知らせ 2023年10月6日より,stand.fm にて「英語史つぶやきチャンネル」 を始めています.英語史の話題を不定期でカジュアルにお届けします.直下(↓)は最新の配信回となります.2025/01/28(Tue)

お知らせ 「ゆる言語学ラジオ」の最新回(2023年7月18日公開)「英単語帳の語源を全部知るために、研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」に出演しています.ぜひご覧ください.関連する hellog 記事もどうぞ.

また「ゆる言語学ラジオ」からこちらのブログに飛んでこられた皆さん,ぜひ
 (1) 本ブログのアクセス・ランキングのトップ500記事,および
 (2) Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の人気放送回50選
をご覧ください.2023/05/31(Wed)

お知らせ 2023年1月中旬に家入葉子先生(京都大学)と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より発売となります.本書についてはこちらのページで,著者が様々に紹介しています.2023/01/05(Thu)

『文献学と英語史研究』

お知らせ 2022年12月1日(木)13:00--14:00に,Voicy 生放送で「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」を配信しました.詳細はこちらの記事よりどうぞ.2022/12/02(Fri)

お知らせ 2022年11月8日に『ジーニアス英和辞典』第6版が発売となりました.新版で初めて導入されたコラム「英語史Q&A」を執筆させていただいていますので,ぜひ辞典手に取って開いてみていただければと思います.コラムについては hellog でもこちらの記事群で関連する話題を取り上げています.2022/11/15(Tue)

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お知らせ 堀田ゼミの紹介ページがゼミ生により立ち上げられました.入ゼミを希望する学生は必見です.堀田による公式のゼミ紹介はこちらの記事からどうぞ.2022/11/04(Fri)

お知らせ ご愛読ありがとうございます,9刷が発行されています.2022年9月より電子書籍としても配信開始です.本ブログの内容を多く取り込んだ拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』が2016年に研究社より出版されました.本の趣旨や補足情報のために,コンパニオン・サイト (naze) を用意していますので,そちらも是非ご覧ください.また,本ブログ内の「#2764. 拙著『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』が出版されました」にも紹介があります.2024/08/10(Sat)

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お知らせ 2022年度も連載記事「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」(NHKラジオテキスト『中高生の基礎英語 in English』)を継続しています.最新の9月号では「なぜ英語には類義語が多いの?」という疑問を取り上げています.ぜひテキストを手にとってご覧ください.本ブログより紹介記事もどうぞ.2022/08/15(Mon)

お知らせ このたび様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
本ブログ内でも本書の紹介記事をいくつか書いていますので,そちらもご覧ください.さらに,7月9日と8月1日には2回にわたって3編者対談を Voicy で配信しましたので,ぜひこちらこちらより各々お聴きください.

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お知らせ 知識共有サービス「Mond」にて英語に関する素朴な疑問に回答しています.良質な「素朴な疑問」が多いです.こちらからどうぞ.本ブログより紹介記事もどうぞ.2022/02/10(Thu)

お知らせ 本ブログベースの拙著『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』の第4刷が出ています.本書のコンパニオン・ページ及び著者による紹介ページをご覧ください.また,本書の内容に沿ったブログ記事へのリンク (hogusu) はおすすめです.2018/09/02(Sun)hogusu_front_cover_small

その他のお知らせ

お知らせ 「手軽に英語史を」というコンセプトで,地味に「hellog ラジオ版」 (hellog-radio) を始めています.1つ数分以内のコンテンツです.これまでのコンテンツ一覧よりどうぞ.2020/07/09(Thu)

お知らせ 大修館『英語教育』の2020年3月号に,連載「英語指導の引出を増やす 英語史のツボ」の第12回(最終回)の記事が掲載されています.今回の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.どうぞご一読ください.2020/02/14(Fri)eigokyouiku_rensai_12_20200214_front_cover_small.jpg

お知らせ 1月5日発売の英語学習誌『CNN English Express』2月号に「歴史を知れば納得! 英語の「あるある大疑問」」と題する拙論が掲載されています.英語史の観点から素朴な疑問を解くという趣向の特集記事で,英語史の記事としては珍しく8頁ほどの分量を割いています.どうぞご一読ください.hellog 内の紹介記事もどうぞ.2019/01/07(Mon)cnn_ee_201902_front_cover_small

お知らせ 私も一部執筆している服部 義弘・児馬 修(編) 『歴史言語学』朝倉日英対照言語学シリーズ[発展編]3 朝倉書店,2018年.が2018年3月に出版されました.日本語史と比較対照しながら英語史や英語の歴史的変化について学べます.本ブログ内の#3283の記事にも簡単な紹介がありますのでご覧ください.2018/04/23(Mon)

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お知らせ Simonn Horobin 著 Does Spelling Matter? の拙訳『スペリングの英語史』が早川書房よりより出版されました.紹介記事として,本ブログ内の「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」もご覧ください.2017/10/01(Sun)

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お知らせ 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に関連する研究社ベースの連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」が始まっています(そして12回で終わりました).2017/12/21(Thu)


最近 7 日分を以下に表示中 / 今月の一覧

2025-04-02 Wed

#5819. 開かれたクラス,閉じたクラス,品詞 [pos][terminology][linguistics][category][word_class][prototype][noun][verb][adjective][adverb][lexicology]

 pos のタグの着いたいくつかの記事で,品詞とは何かを論じてきた.今回も言語学辞典に拠って,品詞について理解を深めていきたい.International Encyclopedia of Linguistics の pp. 250--51 より,8段落からなる PARTS OF SPEECH の項を段落ごとに引用しよう.

PARTS OF SPEECH. Languages may vary significantly in the number and type of distinct classes, or parts of speech, into which their lexicons are divisible. However, all languages make a distinction between open and closed lexical classes, although there may be relatively few of the latter in languages favoring morphologically complex words. Open classes are those whose membership is in principle unlimited, and may differ from speaker to speaker. Closed classes are those which contain a fixed, usually small number of words, and which are essentially the same for all speakers.


 品詞論を始める前に,まず語彙を「開かれたクラス」 (open class) と「閉じたクラス」 (closed class) に大きく2分している.この2分法は普遍的であることが説かれる.

The open lexical classes are nouns, verbs, adjectives, and adverbs. Not all these classes are found in all languages; and it is not always clear whether two sets of words, having some shared and some unshared properties, should be identified as belonging to distinct open classes, or to subclasses of a single class. Criteria for determining which open classes are distinguished in a given language are syntactic and/or morphological, but the names used to identify the classes are generally based on semantic criteria.


 「開かれたクラス」についての説明が始まる.言語にもよるが,概ね名詞,動詞,形容詞,副詞が主に意味的な基準により区別されるという.

The noun/verb distinction is apparently universal. Although the existence of this distinction in certain languages has been questioned, close scrutiny of the facts has invariably shown clear, if sometimes subtle, grammatical differences between two major classes of words, one of which has typically noun-like semantics (e.g. denoting persons, places, or things), the other typically verb-like semantics (e.g. denoting actions, processes, or states).


 とりわけ名詞と動詞の2つの品詞については,ほぼ普遍的に区別されるといってよい.

 Nouns most commonly function as arguments or heads of arguments, but they may also function as predicates, either with or without a copula such as English be. Categories for which nouns are often morphologically or syntactically specified include case, number, gender, and definiteness.


 名詞の典型的な機能や保有する範疇が紹介される.

Verbs most commonly function as predicates, but in some languages may also occur as arguments. Categories for which they are often specified include tense, aspect, mood, voice, and positive/negative polarity.


 次に,動詞の典型的な機能や保有する範疇について.

Adjectives are usually identified grammatically as modifiers of nouns, but also commonly occur as predicates. Semantically, they often denote attributes. A characteristic specification is for positive, comparative, or superlative degree. Some languages do not have a distinct class of adjectives, but instead express all typically adjectival meanings with nouns and/or verbs. Other languages have a small, closed class that may be identified as adjectives --- commonly including a few words denoting size, color, age, and value --- while nouns and/or verbs are used to express the remainder of adjectival meanings.


 続けて形容詞の典型的な機能が論じられる.言語によっては形容詞という語類を明確にもたないものもある.

Adverbs, often a less than homogeneous class, may be identified grammatically as modifiers of constituents other than nouns, e.g. verbs, adjectives, or sentences. Their semantics typically varies with what they modify. As modifiers of verbs they may denote manner (e.g. slowly); of adjectives, degree (extremely); and of sentences, attitude (unfortunately). Many languages have no open class of adverbs, and express adverbial meanings with nouns, verbs, adjectives窶俳r, in some heavily affixing languages, affixes.


 さらに副詞が比較的まとまりのない品詞として紹介される.名詞以外を修飾する語として,意味特性は多様である.

Some commonly attested closed classes are articles, auxiliaries, clitics, copulas, interjections, negators, particles, politeness markers, prepositions and postpositions, pro-forms, and quantifiers. A survey of these and other closed classes, as well as a detailed account of open classes, is given by Schachter 1985.


 最後に「閉じたクラス」が簡単に触れられる.

 全体的に英語ベースの品詞論となっている感はあるが,理解しやすい解説である.この項の執筆者であり,最後に言及もある Schachter には本格的な品詞論の論考があるようだ.

 ・ Frawley, William J., ed. International Encyclopedia of Linguistics. 2nd ed. Vol. 3. Oxford: Oxford UP, 2003.
 ・ Schachter, Paul. "Parts-of-Speech Systems." Language Typology and Syntactic Description. Vol. 1. Clause Structure. Ed. Timothy Shopen. p. 3?61. Cambridge and New York: CUP, 1985. 3--61.

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2025-04-01 Tue

#5818. /k/ を表わす <ch> [spelling][digraph][pronunciation][consonant][etymological_spelling][greek][latin][loan_word]

 <ch>≡/k/ を表わす例は,一般にギリシア語からの借用語にみられるとされる.中英語などに <c> などで取り込まれたものが,初期近代英語期にかけて語源的綴字 (etymological_spelling) の原理によって,ギリシア語風に <ch> と綴り直された例も少なくないものと思われる.Carney (219--20) の説明に耳を傾けよう.

Distribution of <ch>

The <ch> spelling of /k/ is restricted almost entirely to §Greek words: archaeology, archaism, archangel, architect, archive, bronchial, catechism, chaos, character, charisma, chasm, chemist, chiropody, chlorine, choir, cholesterol, chord, chorus, christian, chromium, chronic, cochlea, echo, epoch, eunuch, hierarchy, lichen, malachite, matriarch, mechanic, monarch, ochre, oligarch, orchestra, orchid, pachyderm, patriarch, psyche, schematic, stochastic, stomach, strychnite, technical, trachea, triptych, etc. This is by no means a compete list, but it serves to show the problems of using subsystems in deterministic procedures. Some words with <ch>≡/k/ have been in common use in English for centuries (anchor, school) and came by way of Latin rather than directly from Greek. Lachrymose and sepulchre are strictly Latin in origin, but were mistakenly thought in antiquity to have a Greek connection. Many words with <ch>≡/k/ are highly technical complex words used by scientists for whom the constituent §Greek morphemes, such as {pachy} or {derm}, have a separate semantic identity. In some cases the Greek meanings are irrelevant to the technical use of the words since they involve obscure metaphors. One does not normally need to know that orchids have anything to do with testicles --- it's actually the shape of the roots. There appear to be no explicit phonological markers of §Greek-ness in the words listed above. The morphological criterion of word-formation potential is the best marker, but this works best with the technical end of the range. We can hardly cue the <ch> in school by calling up scholastic.


 興味深いのは lachrymosesepulchre などは本来はラテン語由来なのだが,誤ってギリシア語由来と勘違いされて <ch> と綴られている,というくだりだ.ラテン語においてすら,ギリシア語に基づいた語源的綴字があったらしいということになる.せめて綴字においてくらいは威信言語にあやかりたいという思いは,多くの言語文化や時代において共通しているのだろうか.

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.

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2025-03-31 Mon

#5817. B&C の第61節 "Effects of Christianity on English Civilization" (1) --- 超精読会を伊香保温泉よりお届け [bchel][latin][greek][borrowing][christianity][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]



 今朝の Voicy heldio で「#1401.英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (61-1) Effects of Christianity on English Civilization」を配信しました.週末に開催された helwa の高崎・伊香保温泉オフ会活動の一環として,昨朝,伊香保温泉の宿で収録した超精読会の前半部分をお届けしています.
 今回も前回に引き続き Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に司会をお願いしています.7名のヘルメイトの方々と温泉宿で超精読会を開くというのは,これ以上なく豊かな時間でした.読書会は90分の長丁場となったので,収録音源も3回ほどに分けてお届けしていこうと思います.今回は第1弾で,45分ほどの配信となりますす.
 第61節の内容は,7世紀後半から8世紀のアングロサクソンの学者列伝というべきもので,いかにキリスト教神学を筆頭とする諸学問がこの時期のイングランドに花咲き,大陸の知的活動に影響を与えるまでに至ったかが語られています.英文そのものも読み応えがあり,深い解釈を促してくれますが,何よりも同志とともに議論できるのが喜びでした.
 今朝の配信回で対象とした部分のテキスト(Baugh and Cable, p. 80) を以下に掲載しますので,ぜひ超精読にお付き合いください.

61. Effects of Christianity on English Civilization.
The introduction of Christianity meant the building of churches and the establishment of monasteries. Latin, the language of the services and of ecclesiastical learning, was once more heard in England. Schools were established in most of the monasteries and larger churches. Some of these became famous through their great teachers, and from them trained men went out to set up other schools at other centers. The beginning of this movement was in 669, when a Greek bishop, Theodore of Tarsus, was made archbishop of Canterbury. He was accompanied by Hadrian, an African by birth, a man described by Bede as "of the greatest skill in both the Greek and Latin tongues." They devoted considerable time and energy to teaching. "And because," says Bede, "they were abundantly learned in sacred and profane literature, they gathered a crowd of disciples ... and together with the books of Holy Writ, they also taught the arts of poetry, astronomy, and computation of the church calendar; a testimony of which is that there are still living at this day some of their scholars, who are as well versed in the Greek and Latin tongues as in their own, in which they were born."


 B&C読書会の過去回については「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2025-03-30 Sun

#5816. ヴォイニッチ写本に関する有用なウェブサイト [link][voynich]


安形 麻理・安形 輝 『ヴォイニッチ写本』 星海社〈星海社新書〉,2024年.



 昨日の記事「#5815. 安形麻理・安形輝『ヴォイニッチ写本』(星海社,2024年)」 ([2025-03-29-1]) で紹介したヴォイニッチ写本について,同書の巻末にかけて「謎に立ち向かいたい方のために:有用な情報源の紹介」と題する1節がある.そこで挙げられている主要なウェブサイトのリンクを挙げておきたい.

 ・ Cipher manuscript --- Yale University Library: 所蔵館 Yale 大学 Beinecke 図書館よりヴォイニッチ写本の全ページの画像を閲覧できる.
 ・ The Voynich Manuscript: 著名なヴォイニッチ写本研究者 René Zandbergen 氏のウェブサイト.主要な翻字データへのリンクもあり.
 ・ International Conference on the Voynich Manuscript 2022: 2022年にマルタ大学で開催された国際会議の論文集を読むことができる.
 ・ The Most Mysterious Manuscript in the World: 日本のヴォイニッチ写本研究者である高橋健氏のサイト.日本語で読むことができる.

 また,著者の1人,安形麻理氏が,3月15日に『三田評論 ONLINE』にて本書に関する執筆ノートを寄稿されている.

 ・ 安形 麻理・安形 輝 『ヴォイニッチ写本』 星海社〈星海社新書〉,2024年.

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2025-03-29 Sat

#5815. 安形麻理・安形輝『ヴォイニッチ写本』(星海社,2024年) [review][toc][manuscript][voynich][cryptology][cryptography]


安形 麻理・安形 輝 『ヴォイニッチ写本』 星海社〈星海社新書〉,2024年.



 昨年末,「世界で最も謎に満ちた写本」といわれるヴォイニッチ写本 (The Voynich Manuscript) についての,待望の新書が出版された.200頁弱の薄めの新書のなかに,未解読のヴォイニッチ写本(研究)の魅力が濃厚に詰め込まれている.本書後半では,著者らによる最新の研究の成果が示されており,ヴォイニッチ手稿がでたらめな文字列ではなく,背後に何らかの言語が隠されている,つまり解読に値するテキストであることが主張される.巻末には,著者らと博物学者・荒俣宏氏との鼎談の様子も収められており,最後までワクワクしながら読み続けることができる.
 以下,本書の目次を示そう.



第1章 謎めいたヴォイニッチ写本
  1. ヴォイニッチ写本とは
    外観
    文字と挿絵
  2. ヴォイニッチ写本の魅力
    解読へのチャレンジ精神
    真贋論争:中世の写本か20世紀の捏造か
    ヴォイニッチ写本研究の楽しみ
  3. ヴォイニッチ写本発見の経緯
    発見者ヴォイニッチ
    発見から現在まで
    発見されるまでの所在
  4. 中世ヨーロッパにおける写本の作り方

第2章 これまでのヴォイニッチ写本研究
  1. 来歴を明らかにする
    ジョン・ディー
    ルドルフ2世
    ヤコブズ・デ・テペネチ
    ゲオルグ・バレシュ
    マルクス・マルチ
    アタナシウス・キルヒャー
  2. 年代を測定する
  3. 文字を分析する
  4. 解読を試みる
  5. 言語学的に分析する
  6. 似た文書を再現する
  7. テキストの解読可能性を判定する

第3章 データサイエンスと古い本
  1. データサイエンス
    データサイエンスとビッグデータ
    データサイエンスを学ぶことができる大学
  2. 本を研究する
    書誌学とデジタル化
    データに基づく著者推定
    難読化文字や隠された文字の解読
    暗号の解読

第4章 クラスタリングによる分析:解読の可能性そのものを判定する
  1. 解読の可能性の判定
    クラスタリング
  2. 実験の手順
    全体の流れ
    テキストデータの類似度
    トークン化
    トークンに対する重み付け
    ベージ同士の類似度算出
    クラスタリング分析手法
    ページ順に基づく分析法
    クラスタリングの評価
  3. 実験の結果
    ページ同士の内容の類似度
    挿絵によるセクション構造との比較
    ページのクラスタリング結果
  4. クラスタリング結果の評価と比較
    比較対象
    クラスタリングの評価と比較結果
    ページ順の比較

第5章 ヴォイニッチ写本研究の意義と広がり
  1. 分析手法を発展させる
  2. シチズンサイエンス
  3. ヴォイニッチ写本の影響の広がり
  4. 謎に立ち向かいたい方のために:有用な情報源の紹介

第6章 ヴォイニッチ写本の可能性とこれからの研究
  特別鼎談 荒俣宏 × 安形麻理 × 安形輝



 最後の方に「シチズンサイエンス」への言及がありますが,多くの読者の皆さんも,ぜひヴォイニッチ写本解読に貢献してみてはいかがでしょうか?

 ・ 安形 麻理・安形 輝 『ヴォイニッチ写本』 星海社〈星海社新書〉,2024年.

Referrer (Inside): [2025-03-30-1]

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2025-03-28 Fri

#5814. 目次ととも再び紹介,嶋田珠巳『英語という選択 アイルランドの今』(岩波書店,2016年) [irish][irish_english][ireland][language_shift][contact][review][invisible_hand][toc][language_planning]


嶋田 珠巳 『英語という選択 アイルランドの今』 岩波書店,2016年.



 嶋田珠巳先生(明海大学)による,アイルランドの言語事情に関する書籍『英語という選択 アイルランドの今』(岩波書店,2016年)について,「#2798. 嶋田 珠巳 『英語という選択 アイルランドの今』 岩波書店,2016年.」 ([2016-12-24-1]),「#2803. アイルランド語の話者人口と使用地域」 ([2016-12-29-1]),「#2804. アイルランドにみえる母語と母国語のねじれ現象」 ([2016-12-30-1]) で参照してきた.
 今回は,同著の概要をつかむために目次を挙げておきたい.



第一章 アイルランドというフィールド
  I 地点
   民族のことばが英語に取って替わられる
   アイルランドは遠くて近い
   緑のアイルランド
   ほんのすこしの,国,案内
   パブで耳を傾けて
   その土地で感じる文化
  II 自分たちのことば
    アイルランドの二つの言語
    アイルランド語を話しますか
    母語になれない母なることば --- 言語能力と気持ちのねじれ
    アイルランド語でつながる祖先
    英語を手に入れた幸せと不幸せ
    自分たちのことばはアイルランド語
    アイルランド的なありかたのようなもの
    ケルト的悲哀
  III 可能性
    そとに開かれるアイルランド
    フィールドをもつということ
    本書のたて糸,よこ糸

第二章 ことばを引き継がないという選択
  I ことばを取り替えるということ
    アイルランド語を捨てて英語を選んだのか
    個人,コミュニティ,国レベルでの言語政策
    順位づけされる言語
  II 過去から現在
    アイルランドに起こった言語交替
    言語交替の要因
    使用領域への着目
    世代への着目と言語交替の社会心理
  III 現在から未来
    アイルランド語を守る取り組み --- 上からの政策
    いま起こっている言語交替
    親のものとは違う,第二言語としてのアイルランド語
    アイルランド語もさまざまで
    変容するアイルランド語の価値
    アイルランド使用地域の存在

第三章 アイルランド語への思い,英語への思い
    なまの声をきく
    言語交替への思い
    アイルランド語をどう見ているのか
    英語をどう見ているのか
    「英語」それとも「アイルランド英語」?
    英語をどう見ているのか
第四章 話者の言語意識にせまる
    はじめての言語調査
    コミュニティに入る
    フィールドで気づくこと
    言語使用の背後にある話者の意識
    do be 形式の言語外意味
    正しさへの意識
    アイルランドらしさへの意識
    文法形式や語彙に対する意識

第五章 ことばのなかのアイルランドらしさ
  I アイルランド英語のかたち
    特有の語彙
    現地の英語に溶け込むアイルランド語からの借用語
    アイルランド英語に特有の表現
    言語の理
    文法のしくみに「個性」をみる
    アイルランド目線の英語
  II 時の表現
    間違った英語?
    独自の体系
    How long are you here? の意味
    独自の体系
    独特の意味をもつ be after 完了
    be after 完了と have 完了の使い分け
  II 情報構造の表現
    強調構文を手がかりに
    'tis 文は分裂文か
    ことばの内部で働いているしくみ
    アイランド語をみれば合点がいく
    見た目と中身の問題
第六章 ことばが変わること,替わること
  I 言語接触
    接触言語学にとってのアイルランド英語の魅力
    形成と変化をどのようにみるか
    文法のイノベーション
  II ことばの変化と人々の気持ち
    英語と自分たちのことばとの間でゆれるアイデンティティ
    二言語主義の先にみえるものは
    言語の必然? --- 言語の危機と英語の多様性とそれぞれの選択

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参考文献
索引



 言語交替 (language_shift) ,言語接触 (contact),言語政策 (language_planning) など,社会言語学の多くの話題の交差点をなすアイルランド(英)(語)に,ぜひ注目を.

 ・ 嶋田 珠巳 『英語という選択 アイルランドの今』 岩波書店,2016年.

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2025-03-27 Thu

#5813. 水野太貴さんによる『中央公論』の連載「ことばの変化をつかまえる」 [youtube][inohota][yurugengogakuradio][notice][language_change][voicy][heldio]

『中央公論』2025年4月号



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の水野太貴さんが『中央公論』にて新連載「ことばの変化をつかまえる」を開始しています.言語の研究者にインタビューしながら,様々な角度から言語変化 (language_change) を考えていこうという連載です.
 連載初回のタイトルは「「差異化」こそが原動力 --- 社会言語学者・井上逸兵さんに聞く」.インタビューのお相手は,なんと私の同僚で社会言語学者の井上逸兵さんでした.社会言語学の観点から,ことばの変化の裏側には社会的な差異化が働いているという趣旨で語られています.記事の小見出しを取り出すと,以下の通りとなります.

 ・ 言語の恣意性と社会的な取り決め
 ・ 解明したい謎
 ・ 「自分は他人とは違う」という意識
 ・ 連帯機能
 ・ お上が定めるスタンダード
 ・ ことばの変化は予測できるのか

 とりわけ水野さんが「解明したい謎」として挙げられている6点に要注目です.いずれも言語変化論において重要な論点です.

 1. なぜことばは変化するのか? (要因)
 2. ことばの変化にはどんなパターンがあるか? (法則)
 3. 「変化に伴うコスト」を上回るほどのリターンはあるのか? (便益)
 4. ことばの変化は予測できるのか? (再現性)
 5. 日本語の中で,歴史上類を見ないことばの変化はあったか? (歴史)
 6. 世界の言語も,日本語と同じような変化をしているのか? (国際比較)

 井上逸兵さんがインタビューを受けたということで,すかさず我々の「いのほた言語学チャンネル」でも,この新連載記事を紹介しました.「#319. ゆる言語学ラジオ水野太貴さん『中央公論』誌連載「ことばの変化をつかまえる」に注目!第1回は井上登場!「差異化」が原動力、そして、水野さんが言語学の原動力!」をご覧ください.



 さらに,私自身も先日 heldio にて「#1389. ゆる言語学ラジオの水野太貴さんが『中央公論』の連載「ことばの変化をつかまえる」を開始 --- 初回のお相手は井上逸兵さん」として紹介していますので,そちらもぜひお聴きください.
 いろいろな意味で私が聴きてみたかった特別なお2人のインタビューが,実現しました.水野さんの言語変化をめぐる新連載,2025年度は毎月号が待ち遠しくなりそうです.

 ・ 水野 太貴 「連載 ことばの変化をつかまえる:「差異化」こそが原動力 --- 社会言語学者・井上逸兵さんに聞く」『中央公論』(中央公論新社)2025年4月号.2025年.168--75頁.

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最終更新時間2025-04-02 13:02

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