hellog〜英語史ブログ

#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場[notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]

2026-07-16



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が,先々週と先週に引き続き3度目(最終回)の出演です.堀元さんが熱血教師,井上さんと水野さんが生徒に扮する,驚きの教室コントのシチュエーションで,堀元先生が「いのほた言語学チャンネル」の編集にアドバイスを加えつつ,YouTuber 論を語るという異色の回です.抱腹絶倒の36分ですが,極上の YouTube 制作技術論かつメディア論となっています.動画公開からの初速も著しく,とんでもなく注目されています!
 今回の動画を視聴して感じたのは,コントの枠を超えて堀元さんの「YouTube 哲学・技術論」の結晶となっていたということです.その裏で,とりわけ印象深かったのは,井上さんが語った知の流れ方の大変化,ひいては学術とメディアの関係の革命という視点です.井上さんによれば,大学という権威の象徴が民を啓蒙するという20世紀型の中央集権的なスタイルは終わりを告げ,21世紀はアルゴリズム型の分散型社会へと移行しています.学術についても,もはや本や雑誌という媒体だけでは立ちゆかない時代が到来していると,私も考えています.
 動画のなかで堀元さんが放った「YouTube は学校じゃねえんだよ」という言葉は,本質を突いています.YouTube には視聴維持率の戦いがあるけれども,授業にはそれがありません,最初の数秒で引きつけ,1文字でも無駄な情報を削り,スマホの画面で省略されない短いタイトルに引きのある情報を詰め込む --- この「手前に引きのある情報をもってくる」という徹底的な技術論は,大学教員が必ずしも得意とするわけではないウケる発信の難しさを浮き彫りにしています.
 今回のゆる言語学ラジオ回で,大学教授が「もっとおもしろくしたい」「YouTuber として数字を出したい」とプロのアドバイスを真摯に仰ぐ姿勢は,きわめて珍しいことです.研究者からの YouTube 等の新メディアでの発信が当たり前になってくる時代は,まだ数年先のことかもしれませんが,間違いなく到来するだろうと思っています.
 井上・堀田は職業 YouTuber ではありません.動画内で堀元さんが「YouTuber は怒りと憎しみを食って大きくなる生き物だ」「視聴者を騙せ」と述べているような方向性を追い求める生き方は不可能です.私たちが目指しているのは,学問の魅力で世の中の人々の知的好奇心を刺激することです.プロ YouTuber のアドバイスはありがたくちょうだいしつつ,基本は学問のおもしろさを元気に長く伝えていく継続性こそが大事なのだろうと,改めて認識した次第です.
 「ゆる言語学ラジオ」のお二方には,言語学という分野をここまで盛り上げ,さらに私たちを収録にお呼びいただいた旨,改めて深く感謝します.抱腹絶倒のコントの裏にある YouTuber 論を,ぜひ皆さんも視聴して味わってみてください.

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