hellog〜英語史ブログ

#5622. methoughts の用例を再び[3ps][impersonal_verb][verb][inflection][preterite][analogy][methinks][eebo][corpus][emode][comment_clause]

2024-09-17

 「#5385. methinks にまつわる妙な語形をいくつか紹介」 ([2024-01-24-1]) と「#5386. 英語史上きわめて破格な3単過の -s」 ([2024-01-25-1]) で触れたように,近代英語期には methoughts という英文法史上なんとも珍妙な動詞形態が現われます.過去形なのに -s 語尾が付くという驚きの語形です.
 今回は,methoughts の初期近代英語期からの例を EEBO corpus より抜き出してみました(コンコーダンスラインのテキストファイルはこちら).10年刻みでのヒット数は,次の通りです.

 ALL1600s1610s1620s1630s1640s1650s1660s1670s1680s1690s
METHOUGHTS184   16618377541


 15--16世紀中には1例も現われなかったので表中には示しませんでした.17世紀に入り,とりわけ後半以降に分布を伸ばしてきています.EEBO で追いかけられるのはここまでですが,この後の18世紀以降の分布も気になるところです.
 コンコーダンスラインを眺めていると,methoughts は主節を担うというよりも,すでに評言節 (comment_clause) として挿入的に用いられている例が多いことが窺われます(これ自体は,対応する現在形 methinks の役割からも容易に予想されますが).
 また,methoughts の近くに類義語というべき seem が現われる例もいくつか確認され,評言節からさらに発展して,副詞程度の役割に到達しているとすら疑われるほどです.

 ・ 1676: methoughts she seem'd though very reserv'd, and uneasie all the time i entertain'd her
 ・ 1678: methoughts my head seemed as it were diaphanous
 ・ 1679: nay, they so beautiful, so fair did seem, methoughts i took and eat'em in my dream
 ・ 1695: yet methoughts you seem chiefly to place this vacancy of the throne upon king iames's abdication

 英語史上短命に終わった,きわめて珍妙なこの語形から目が離せません.

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