hellog〜英語史ブログ

#4878. 『チョーサー巡礼』が刊行されました[chaucer][notice]

2022-09-04

 8月30日に悠書館より『チョーサー巡礼 古典の遺産と中世の新しい息吹きに導かれて』が刊行されました.



 故池上忠弘氏が企画し,狩野晃一氏が編集した,チョーサーの作品と時代背景に関する本格的なコンパニオンです.こちらの目次をご覧いただくと分かるように,チョーサーの生涯,写本,言語はもとより,中世ヨーロッパ文学の背景から,当時の政治,美術,音楽に至るまでの広い範囲をカバーしていますので,中世英語英文学とその周辺分野への導入書としても役立つと思います.
 私自身は,池上昌氏,狩野晃一氏とともに第3章「チョーサーの英語」を執筆しました.チョーサーの英語は中英語 (Middle English) と呼ばれており,中英語期(1100--1500年頃)の後半に相当する時代の英語です.現代英語の知識があれば,多少の手ほどきと注を頼りに何とか読み進めることができます.とは言っても,6世紀以上の隔たりがありますので,たやすく読めるわけではありません.現代英語と比較して異なっている点,そして異なっていない点を先に押さえておけば,チョーサーの原文にも馴染みやすいはずです.第3章ではチョーサーの英語の特徴について,語彙,文法,発音,スペリング,韻律の観点から30頁ほどで易しく解説しています.
 今回の『チョーサー巡礼』刊行より1年ほど先立って,悠書館より『カンタベリ物語 共同新訳版』(池上忠弘(監訳))も刊行されています.当初は1冊で同時刊行という話もあったのですが,あまりに分量が嵩んだこともあり,2冊を順次刊行するということになりました.



 2冊の編集に尽力された狩野晃一氏が,ヒロ・ヒライ氏による YouTube 「BH チャンネル」にて対談されていますので,ぜひ以下よりご視聴ください.

 ・ 「【対談】チョーサー『カンタベリ物語』共同新訳版!!」
 ・ 「【生配信】待望の『チョーサー巡礼』ついに登場!中世英文学!」

 ・ 池上 忠弘(企画),狩野 晃一(編) 『チョーサー巡礼 古典の遺産と中世の新しい息吹きに導かれて』 悠書館,2022年.
 ・ ジェフリー・チョーサー(著),池上 忠弘(監訳) 『カンタベリ物語 共同新訳版』 悠書館,2021年.
 ・ 池上 昌・堀田 隆一・狩野 晃一 「チョーサーの英語」 『カンタベリ物語 共同新訳版』(池上 忠弘(企画),狩野 晃一(編)) 悠書館,2022年.93--124頁.

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