hellog〜英語史ブログ

#4364. 綴字も発音も意味もややこしい desert, dessert, dissert[latin][french][prefix][etymology][diatone][khelf_hel_intro_2021]

2021-04-08

 標題は,その派生語も含め,頭が混乱してくる単語群です.綴字はややこしく似ているし,その割には発音は同じだったり異なっていたりする.意味も似ているような,そうでないような.こういう単語は学習する上で実に困ります.このややこしさは語源を遡ってもたいして解消しないのですが,新年度の英語史導入キャンペーン期間中ということもあり,歴史的にみてみたいと思います(cf. 「#4357. 新年度の英語史導入キャンペーンを開始します」 ([2021-04-01-1])).
 まずは,もっとも問題がなさそうで,知らなくてもよいレベルの単語である dissert v. /dɪˈsəːt/ から行きましょう.「論じる」を意味する動詞で,辞書では《古風》とのレーベルが貼られています.この単語のように綴字で <s> が重複する場合には,原則として無声音の /s/ となります(しかし,以下に述べるように,すぐに例外が現われます).この動詞から派生した名詞 dissertation 「学術論文(特に博士論文)」は知っておいてもよい単語ですね.
 語源としては,ラテン語で「論じる」を意味する動詞 dissertāre に遡ります.強意の接頭辞 dis- に,語幹 serere (言葉をつなぐ,作文する)から派生した反復形をつなげたもので,「しっかり言葉をつなぎあわせる」ほどが原義です(cf. 同語幹より series も).
 次に「デザート」を意味する dessert /dɪˈzəːt/も馴染み深い名詞だと思います.<ss> の綴字ですが,上記の早速の例外で,有声音 /z/ で発音されます.この単語は,フランス語の動詞 desservir (供した食事を片付ける)の過去分詞形に由来します.つまり「膳を下げられた」後に出されるもの,まさに「食後のデザート」なわけです.フランス語の除去の接頭辞 des- に servir (英語にも serve として入り「食事を出す」の意)という語形成なので,納得です.
 さらに次に進みます.「デザート」の dessert とまったく同じ発音ながらも,<s> が1つの desert なる厄介な単語があります.複雑な事情を整理するために,以下では,起源の異なる desert 1desert 2 の2種類を区別していきます.最初に desert 1 から話しましょう.desert 1 は「捨てる,放棄する」を意味する動詞です.例文として,She was deserted by her husband. (彼女は夫に捨てられた.)を挙げておきます.この動詞の語源はフランス語 déserter で,さらに遡るとラテン語 dēserere の反復形に行き着きます.語根は serere なので,上述の dissert とも共通ですが,今回の単語についている接頭辞は dis- ではなく de- です.つなげる (serere) ことを止める (de) という発想で「捨てる,見捨てる」というわけです.
 そして,この動詞 desert 1 が,そのままの形態で形容詞化し,さらに名詞化したのが「捨てられた(地)」としての「砂漠」です.英語では名前動後 (diatone) の傾向により,「砂漠」としての desert の発音は,強勢が第1音節に移って /ˈdɛzət/ となるので要注意です.
 desert 2 /dɪˈzəːt/ に移りましょう.こちらは名詞で「当然受けるべき賞罰」を意味します.上記のこれまでの語とはまったく異なる雰囲気ですが,これは別語源の deserve /dɪˈzəːv/ (〜に値する)という動詞の過去分詞形に由来する名詞形だからです.当然のごとく値するべき物事,それが賞罰ということです.この元の deserve なる動詞はフランス語 deservir からの借用で,これ自身はラテン語 dēservīre に遡ります.今回の接頭辞 - は強意,語幹 servīre は「仕える」の意味で,後者は後に serve として英語に取り込まれました.「〜に仕えることができるほどに相応しい」→「〜に値する」といった意味の発展と考えられます.
 さて,混乱しやすい単語群の語源を遡ることで,かえって混乱したかもしれません(悪しからず).なお,最後に取り上げた動詞 deserve は,なかなか使い方の難しい動詞でもあります.The report deserves careful consideration., He deserves to be locked up for ever for what he did., Several other points deserve mentioning. など取り得る補文のヴァリエーションも豊富です.意味的な観点から探ってもおもしろい動詞だと思います.意味的な観点から,昨日「英語史導入企画2021」にて大学院生によるコンテンツ「"You deserve it." と「自業自得」」が公表されました.こちらもご一読ください.

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