hellog〜英語史ブログ

#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識[hel_education][etymology][toc][lexicology][historiography]

2019-01-11

 英語史や英語語源学が英語学習に貢献できる最大のものは,語源を利用した英単語の暗記である.ラテン系の接頭辞や接尾辞など,語源的な知識を用いて英語語彙を増やす方法は昔から試みられている.最近では『英単語の語源図鑑』が注目されているようだ.
 この学習用の効果は私も疑わないが,この方向でさらにステップを目指すのであれば,ぜひ英語史概説の修得を視野に入れたい.そんなときに役立つのが,下宮ほか編の『スタンダード英語語源辞典』の付録である.語彙学習にカスタマイズされた簡易的な英語史の概説として,おおいに奨められる.pp. 611--41 という40頁ほどの(内容の割には)コンパクトな解説だが,よく書けており,これを読んでおくのとおかないのとではスタートラインが違うと思う.以下に,章節の見出しを再現し,雰囲気をつかんでもらおう.語彙の観点に立った英語史入門と理解して差支えない.

1. 英語の語源
   1.1. 英語の語源を知るための予備知識
      英語の歴史と同系の諸言語
   1.2 歴史言語学 (historical linguistics) のキーワード
      二重語
      ウムラウトとアプラウト
   1.3 単語の構造
      派生語,複合語
      混種語
   1.4 音韻変化 (phonetic change)
      同化
      異化
      音位転換
   1.5 同源であるかどうかの見分け方
      形が似ていて語源が異なる場合
      形が異なっても同源の場合
   1.6 印欧語根の例
   1.7 英語・ドイツ語・フランス語の関係
      ドイツ語とは文法・基本単語が共通
      フランス語とは語彙が共通
2. 印欧祖語からゲルマン語へ
   2.1 サンスクリットの発見と印欧祖語
      比較言語学の成立
      印欧語族の発見
   2.2 印欧祖語と印欧語族
      祖語の再建
      印欧語族の系統
   2.3 ゲルマン民族とゲルマン語
      ゲルマン祖語
      イギリス人の祖先
      ゲルマン祖語の分化
   2.4 印欧祖語からゲルマン語へ
      グリムの法則
      ヴェルナーの法則
      ゲルマン語のアクセントの特徴
      ゲルマン語の分化の進展
3. 英語の歴史 --- 古英語・中英語を中心にして ---
   3.1 Stratford-upon-Avon について
      英語の歴史の原点を見る
      ブリテン島の原住民
      ケルト語起源の語
      ラテン語起源の語
      本来の英語 --- ゲルマン起源の語 ---
   3.2 英語の歴史の時代区分
      3つの時代区分
      古英語と中英語
      古英語の時代
      中英語の時代
   3.3 外来語について
      ラテン語からの借用
      古ノルド語からの借用
      フランス語からの借用
   3.4 古英語ミニ解説
      聖書の古英語訳
      ドイツ語と似た文法上の性
      名詞・形容詞・動詞の変化
      屈折の実例
4. ラテン語・ギリシア語ミニマム
   4.1 ヨーロッパの二大文明語
      語彙の60%はギリシア・ラテン起源
   4.2 ラテン語
      名詞
      動詞
      文例
   4.3 ギリシア語
      豊富な変化形
      名詞
      動詞
      用例


 なお,筆者も別の観点から「語彙学習のための英語史」を試みたことがある(「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1]) を参照).

 ・ 下宮 忠雄・金子 貞雄・家村 睦夫(編) 『スタンダード英語語源辞典』 大修館,1989年.

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