#3462. 5つの爵位の2番目 marquess[history][title][suffix]


 イングランドで14世紀半ばに完成した「5つの爵位」の第1位について,「#3446. 5つの爵位の筆頭 duke」 ([2018-10-03-1]) で紹介した.爵位の第2位は marquess /ˈmɑːkwəs/ (侯爵)である.単語としては,ラテン語の marchio に遡り,これはフランク王国や神聖ローマ帝国において,「蛮族」との国境地帯(辺境区= march)を守護する最高司令官に起源をもつ.帝国にとって辺境区とは国境を定める最重要地帯であり,ここに有能な司令官を置くことは統治の要諦である.「辺境伯」は田舎の貴族などではなく,帝国拡張の最前線で奉仕する一級の貴族だったのである.marquess とは,上位の duke 位を射程に収めた,相当な身分だったとみてよい.イングランドでの初めての授爵は1385年であり,単語としての初出も多少前後するにせよ14世紀中のようだ.
 イギリス以外では marquis /ˈmɑːkwəs, mɑːˈkiː/という綴字・発音が用いられる.ちなみに侯爵夫人はイギリスでは marchioness /mˈɑːʃənəs/, イギリス以外では marquise /mɑːˈkwiːz/ である.念のために述べておくが,marquess の -ess を女性接尾辞と間違えてはいけない.
 ただし,上に記した綴字や発音の区別には伝統に基づく微妙な基準があるようで,1905年の NED (後の OED)には次のような記述があったという.

N.E.D. (1905) notes s.v. 'The prevailing spelling in literary use appears to be marquis. Some newspapers, however, use marquess, and several English nobles bearing the title always write it in this way.' The official spelling used in the Roll of the House of Lords is marquess, which is the usual spelling for the title in the British and Irish peerage; marquis is reserved for the foreign title (in Scotland, however, marquis is sometimes preferred for pre-Union creations, apparently in memory of the 'Auld Alliance' with France). The spelling marquess is sometimes extended to non-French foreign titles.


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