hellog〜英語史ブログ

#3408. Elizabeth の数々の異名[onomastics][personal_name][shortening][abbreviation][hebrew]

2018-08-26

 標題の Elizabeth は,英国史の最も偉大な2人の女性に代表される典型的な英語の女性人名である.旧約聖書に現われるたいへん古い名前であり,語源もよく分かっていないようだが,ヘブライ語で「神の誓い」「神は完全なり」を表わす Elisheba に由来するのではないかと言われる.
 英国では16世紀後半の Elizabeth I の治世が契機となり,後の3世紀間,英語女性名としては絶大な人気を誇ったが,20世紀になると(Elizabeth II の治世にもかかわらず)古めかしい名前と評価されるようになったからか,かつてのような人気は博していないようだ.
 聖書にも現われる古い名前だけに,英国のみならずヨーロッパ諸国で同名,およびそこから派生した名前が人名として広く採用されているが,それらが改めて英語人名として英語社会に入ってくると,Elizabeth ファミリーと呼ぶべき種々の異名が行なわれることになった.あまつさえ,英語内部で省略形,愛称形 (hypocorism),地方方言形も発達してきたので,英語では多種多様な Elizabeth が流通していることになる.以下に,Crystal (148) に拠って,代表的なものを挙げよう.

 ・ Short forms: Bess, Bet, Beth, Eliza, Elsa, Liza, Lisbet, Lisbeth, Liz, Liza
 ・ Pet forms (hypocorism): Bessie, Bessy, Betsy, Bette, Betty, Elsie, Libby, Lilibet, Lizzie, Lizzy, Tetty
 ・ Regional forms: Elspet, Elspeth, Elspie (Scottish)
 ・ Foreign forms: Elizabeth (common European spelling); Babette, Elise, Lise, Lisette (French); Elsa, Else, Ilse, Liesel (German); Bettina, Elizabetta (Italian); Isabel, Isabella, Isbel, Isobel, Izzie, Sabella (Spanish/Portuguese); Elilís (Irish Gaelic); Ealasaid (Scottish Gaelic); Bethan (Welsh)

 歴史的には,これらの異名の各々に対して綴字も様々あり得たわけであり,とりわけ標準的な綴字が普及する18世紀より前には,個人名の「正しい」綴字へのこだわりは稀薄だったので,綴字の多様性は著しい.「#1720. Shakespeare の綴り方」 ([2014-01-11-1]) で示唆したとおりである.Elizabeth (および他の多くの名前)について,歴史的にどれだけ多くのヴァリエーションがあったことだろうか.「斉藤」「斎藤」「齋藤」「齊藤」の比ではない!?

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

Referrer (Inside): [2019-03-29-1] [2018-09-20-1]

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