hellog〜英語史ブログ

#3049. 近代英語期でもアルファベットはまだ26文字ではなかった?[alphabet][johnson]

2017-09-01

 「#3038. 古英語アルファベットは27文字」 ([2017-08-21-1]) で触れたように,英語のアルファベットは昔から変わらず26文字だったわけではないこと,歴史のなかで多少の増減を繰り返してきたものであることを述べた.では,現代の26文字となったのはいつか.答えは,近代英語期といってよい.
 Johnson は,影響力のある Dictionary (1755) の序文に続く "A Grammar of the English Tongue" のなかで,英語アルファベットが24文字あるいは26文字からなっていると述べている.

Our letters are commonly reckoned twenty-four, because anciently i and j, as well as u and v, were expressed by the same character; but as those letters, which had always different powers, have now different forms, our alphabet may be properly said to consist of twenty-six letters.


 Johnson の時代には,アルファベットが一般的には伝統に従って24文字のセットと考えられていたことがわかる.しかし,i/ju/v の分化がすでに受け入れられているわけだから,それを認定してアルファベット26文字とみなすのがよい,というのが Johnson の意見だ.だが,そもそも何をもって「アルファベットの文字セット」と呼ぶべきなのか,文字形で数えるのか,文字素で数えるのか,などの細かい基準については定められているわけでもないので,文字セットの問題はあくまで緩く考えておく必要があるだろう.
 Johnson は上のように理屈のうえでは26文字としながらも,Dictionary の配列では,i/j とマージしているし,u/v についても同様である.配列レベルでは,これらを計4文字と数えずに計2文字と数えていることになる.例えば,inwreathe の見出し後に job が続くし,vizier の後に ulcer が続いている.この配列法はその後の辞書でもしばらく踏襲されたが,1820年代にようやく現代人が慣れ親しんでいる26文字のフォーマットで配列されるようになる (Crystal 191) .英語アルファベットはどのように数えても26文字という認識が定着したのは,つい200年ほど前のことである.

 ・ Crystal, David. Spell It Out: The Singular Story of English Spelling. London: Profile Books, 2012.

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