標題は,英語史における完了を表わす構造の変異と変化を巡る大きな問題の1つである.本ブログでも「#2490. 完了構文「have + 過去分詞」の起源と発達」 ([2016-02-20-1]),「#1653. be 完了の歴史」 ([2013-11-05-1]),「#1814. 18--19世紀の be 完了の衰退を CLMET で確認」 ([2014-04-15-1]) などの記事で取り上げてきた.英語に限らず他の言語にも,have 完了と be 完了の分布やその変化を巡って類似した状況があり,「#2634. ヨーロッパにおける迂言完了の地域言語学 (1)」 ([2016-07-13-1]) で紹介したように通言語的な研究もなされてきた.
もう1つの通言語的で類型論的な研究として,Sorace を挙げよう.Sorace は西ヨーロッパの諸言語を比較し,have 完了と be 完了の変異や変化はランダムではなく,動詞の意味的特性により予測できるとして "Auxiliary Selection Hierarchy" を提案した.手短にいえば,相 (aspect) と主題 (theme) の観点から,自動詞に関して "controlled process" (統御された過程)を表わす動詞であればあるほど完了の助動詞として have を取りやすく,統御性が低いと be を取りやすくなるという.Sorace (863) のオリジナルの図を見やすくした Los (76) による改変版を再現しよう.
change of location verbs (arrive) | most likely to select be |
change of state verbs (become) | ↑ |
continuation of pre-existing state (remain) | | |
existence of state (be, sit, lie) | | |
uncontrolled process (tremble, skid, sneeze) | | |
controlled process (motional) (swim, run, cycle) | ↓ |
controlled process (nonmotional) (work, play) | most likely to select have |
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