昨日の記事 ([2017-03-23-1]) で,英語史連載企画「現代英語を英語史の視点から考える」の第3回の記事「なぜ英語は母音を表記するのが苦手なのか?」を紹介した.その記事を読むにあたって,文字史やアルファベット史におけるフェニキア文字の重要性を理解していると,よりおもしろくなると思われるので,ここに補足しておきたい.
フェニキア文字は,それ自身が紀元前2千年紀前半に遡るシナイ文字や原カナン文字などから発展した文字体系であり,前1000年頃に使われていた子音文字体系である.このフェニキア文字から,現在まで広く使用されている多種多様なアルファベット文字体系が生じたという点で,まさにアルファベットの母というにふさわしい(以下,『世界の文字の物語』 (8--9) のタイムラインの一部を掲載).
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フェニキア文字の影響を受けた各種の文字体系は,地理的にはユーラシア大陸全域に及んでおり,東アジアの漢字系統の文字体系を別とすれば,少なくともこの2千年間,地球上で最も影響力のある文字グループを形成してきたといえる.
私たちが英語を書き記すのに用いているアルファベットは「ローマン・アルファベット」あるいは「ラテン文字」(正確には,その変種というべきか)だが,それが文字体系としてもっている本質的な特徴の多くは,フェニキア文字のもっていた特徴に由来するといってよい.したがって,英語の文字や綴字について深く考察していくと,否応なしにフェニキア文字やそれ以前にまで遡るアルファベットの歴史を参照せざるを得ない.
フェニキア人とその文字に関しては,昨日挙げたリンク先のほか,以下の記事も参照されたい.
・ 「#2105. 英語アルファベットの配列」 ([2015-01-31-1])
・ 「#2417. 文字の保守性と秘匿性」 ([2015-12-09-1])
・ 「#2482. 書字方向 (3)」 ([2016-02-12-1])
・ 古代オリエント博物館(編)『世界の文字の物語 ―ユーラシア 文字のかたち――』古代オリエント博物館,2016年.
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