hellog〜英語史ブログ

#2328. 中英語の多言語使用[me][bilingualism][french][latin][contact][sociolinguistics][writing][diglossia][register]

2015-09-11

 中英語における,英語,フランス語,ラテン語の3言語使用を巡る社会的・言語的状況については,これまでの記事でも多く取り上げてきた.例えば,以下を参照.

 ・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
 ・ 「#661. 12世紀後期イングランド人の話し言葉と書き言葉」 ([2011-02-17-1])
 ・ 「#1488. -glossia のダイナミズム」 ([2013-05-24-1])
 ・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
 ・ 「#2025. イングランドは常に多言語国だった」 ([2014-11-12-1])

 Crespo (24) は,中英語期における各言語の社会的な位置づけ,具体的には使用域,使用媒体,地位を,すごぶる図式ではあるが,以下のようにまとめている.

LANGUAGERegisterMediumStatus
LatinFormal-OfficialWrittenHigh
FrenchFormal-OfficialWritten/SpokenHigh
EnglishInformal-ColloquialSpokenLow


 Crespo (25) はまた,3言語使用 (trilingualism) が時間とともに2言語使用 (bilingualism) へ,そして最終的に1言語使用 (monolingualism) へと解消されていく段階を,次のように図式的に示している.

ENGLANDLanguagesLinguistic situation
Early Middle AgesLatin--French--EnglishTRILINGUAL
14th--15th centuriesFrench--EnglishBILINGUAL
15th--16th c. onwardsEnglishMONOLINGUAL


 実際には,3言語使用や2言語使用を実践していた個人の数は全体から見れば限られていたことに注意すべきである.Crespo (25) も2つ目の表について述べている通り,"The initial trilingual situation (amongst at least certain groups) developed into oral bilingualism (though not universal) which in turn gradually resulted in vernacular monolingualism" ということである.だが,いずれの表も,中英語期のマクロ社会言語学的状況の一面をうまく表現している図ではある.

 ・ Crespo, Begoña. "Historical Background of Multilingualism and Its Impact." Multilingualism in Later Medieval Britain. Ed. D. A. Trotter. Cambridge: D. S. Brewer, 2000. 23--35.

Referrer (Inside): [2015-09-28-1]

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