標題の問いに手っ取り早く答えるには,次の表で事足りる(Görlach (68) による表の一部より).
| South | Midland | North |
Present Indicative | 3sg. | -(e)þ | -(e)þ | -(e)s |
pl. | -(e)þ | -(e)n | -(e)s |
これを地図上に示すと「#790. 中英語方言における動詞屈折語尾の分布」 (
[2011-06-26-1]) の通りとなるが,より詳しい分布を得たいときには
LAEME (初期中英語)と
eLALME (後期中英語)を参照するのが便利である (cf. 「#1622. eLALME」 (
[2013-10-05-1])) .以下では,両アトラスより得られた地図の画像を貼り付けよう(クリックするとより大きく綺麗な画像が得られる).まずは,1150--1325年をカバーする
LAEME より,3単現(左)と複現(右)の語尾の分布をそれぞれ示す.
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LAEME: 3sp 's' and 'th' |
LAEME: pp 's', 'th', 'n', 'e', and zero |
両地図で北部に集まる赤丸が -
s を,南部に集まる青四角が -
th を表す.右の複現の語尾では東中部その他に黒三角が散在しているが,これは -
n 語尾を表す.次に,複数代名詞と接する動詞の現在形が -
e またはゼロの語尾をとる "Northern Present Tense Rule" (NPTR; cf. 「#689. Northern Personal Pronoun Rule と英文法におけるケルト語の影響」 (
[2011-03-17-1]),
nptr) の分布図を見よう.
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LAEME: NPTR pp 'e' and zero
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では次に後期中英語の分布に移る.
eLALME では,語尾の種類ごとに別々の地図を作成した.まずは3単現から.
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eLALME: 3sp 's' |
eLALME: 3sp 'th' |
前時代の分布をよく受け継いでおり,左図の通り -
s が北部に,右図の通り -
th が中部以南に分布しているのがわかる.複現については,-
s, -
th, -
n, -
e (or zero) の4種類について各々の地図を見てみよう.
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eLALME: pp 's' |
eLALME: pp 'th' |
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eLALME: pp 'n' |
eLALME: pp 'e' or zero |
こちらも前時代の分布をよく受け継いでおり,北部で -
s (左上図),中部以南で -
th (右上図)が優勢だが,中部で -
n (左下図)が前時代よりも著しく拡張していることが見て取れる.全体的に,初期中英語と後期中英語の分布間で量的な差は見られるが,質的には大きな変化はないといってよいだろう.
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・ Görlach, Manfred.
The Linguistic History of English. Basingstoke: Macmillan, 1997.
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