hellog〜英語史ブログ

#1364. なぜ女性は言語的に保守的なのか[gender_difference][sociolinguistics]

2013-01-20

 昨日の記事「#1363. なぜ言語には男女差があるのか --- 女性=保守主義説」 ([2013-01-19-1]) で,女性が男性よりも言語的に保守的な振る舞いをすることを示す,英語の社会言語学調査を概観した.では,なぜそうなのだろうか.Trudgill (73--74) は,2つの仮説を紹介している.

 (1) 男性は「男らしさ」 ("masculinity" or "toughness") を求めて,標準や規範の遵守から逸脱しようとする傾向があるのに対して,女性にはそのような傾向は見られない.言語の男女差は,男性が自らに求める伝統的な価値観に起因するものではないか.
 (2) 多くの社会では,女性は男性よりも社会的な標準や規範により強く従うことを期待される.飲酒や性的な慣習を考えてみれば思い当たるとおりだが,これが言語習慣にも及んでいるのではないか.

 おそらく,(1) と (2) の説明は両方とも正しいだろう.言語も社会的な慣習である以上,他の社会的な慣習と同様に,標準や規範がある.そして,言語もその他の社会的な慣習も同様に,標準や規範に対する態度や遵守の程度に男女差が見られるのは自然である.男女は社会的に期待されている振る舞いが異なるからこそ,言語においても異なる振る舞いを示すのだろう.Trudgill (79--80) は,以下のように総括する.

Gender differentiation in language . . . arises because . . . language, as a social phenomenon, is closely related to social attitudes. Men and women are socially different in that society lays down different social roles for them and expects different behaviour patterns from them. Language simply reflects this social fact. If the social roles of men and women change, moreover, as they seem to be doing currently in many societies, then it is likely that gender differences in language will change or diminish also . . . .


 ・ Trudgill, Peter. Sociolinguistics: An Introduction to Language and Society. 4th ed. London: Penguin, 2000.

Referrer (Inside): [2013-07-04-1] [2013-06-01-1]

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