hellog〜英語史ブログ

#783. 副詞 home は名詞の副詞的対格から[adverbial_accusative][case][adverb]

2011-06-19

 現代英語の名詞には副詞的目的格という用法がある.目的格は歴史的な対格を指すので,この用法は副詞的対格 (adverbial accusative) とも呼ばれる.名詞(句)が副詞(句)として用いられる副詞的目的格の使用例は枚挙にいとまがないが,典型的な例を少数挙げると以下のようなものがある(赤字が副詞的目的格におかれている名詞(句)).

- It's fine today.
- Come this way.
- They walked ten miles.
- We are united to each other heart and soul.
- What the hell is all this?


 現代英語で当たり前のように副詞的に使われている go home も起源をたどれば名詞 home の目的格にすぎない.古英語 hām は男性強変化名詞であり,単数主格と単数対格が同形のために形態上は区別がつけられないが,And hiȝ cyrdon ealle ham "And they all returned home" などにおいて,明らかに方向を示す対格として用いられている.
 このような home が副詞として解釈され,近代期には「家へ(帰る)」という方向の意味から「家に(いる)」という位置の意味へと拡大していった.さらに,「本拠地へ,納まるべき所へ」から「ねらった所へ,まともに」の意味が生じ,drive a nail homeThe spear struck home to the lion's heart. などの表現が生み出された.現代の成句 bring sth home to sbcome home to sb における「痛切に」の含意もこの延長線上にある.

- It suddenly came home to him that he was never going to see Julie again.
- The sight of his pale face brought home to me how ill he really was.


 上に挙げた一つ目の成句 came home to him を統語分析すると,一方では home が副詞として,他方では to him が前置詞句としてそれぞれ came を修飾するとして解されるかもしれない.しかし,成句の意味と home の歴史的な意味と用法を考慮すると,むしろ to himhome という名詞に与格として「彼(にとって)の(理解の)核心」ほどの意でかかってゆき,home が方向を表わす副詞的対格として came にかかってゆくと解釈するほうが,成句の表わす意味を理解しやすい.

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