hellog〜英語史ブログ

#159. 島国であって島国でないイギリス[geography][history][map]

2009-10-03

 日本人にとってイギリスという国は,明治時代より親近感をもって見られてきた.
 日本の皇室とイギリスの王室という類似点,明治以来の両国の交流,日英同盟の経験が,その親近感を醸成してきたといってよい.さらには,地理的な共通点,すなわち日本とイギリスはともにユーラシア大陸の両端に位置する島国という点で共通している,ということが言われる.
 しかし,特に最後に挙げた共通点には注意しなければならない.ともにユーラシア大陸の両端にある島国であることは,純粋に地理的な観点からは確かにその通りなのだが,歴史的にみると,イギリスには島国らしからぬ特徴がある.
 イギリスはその歴史においてブリテン島のみにとどまっていた期間は驚くほど短い.中世以来,イギリスがブリテン島の外側に領土を有していなかった経験は,16世紀のElizabeth朝の短期間に過ぎない.それ以前も以降も,イギリスは海外のどこかしらに領土をもっていたのである.つまり,内から外へ展開していた.また,イギリスはそもそも海外からの移住・征服によって形成されてきた国であることからして,外から内へも開かれていた.このように,あたかも地続きの国であるかのように内外の移動が自然だった.大陸と海で隔てられていることを感じさせない「島国」である.この点,同じ「島国」でも,日本は,外からの大規模な移住・征服を経ていないし,海外に領土をもつようになったのは近代期のみである.
 なぜ同じ島国もでこのように異なるか.その大きな要因は地勢にある.以下の地勢図を比べてみれば,ブリテン島は,西部や北部に高地(黄色い部分)が広がっているが,大陸に向かう南東部は低地(緑の部分)である.海峡を越えたフランス側も低地であるから,ブリテン島がまさに大陸に向かって開かれていることがわかる.山から一気に低地に駆け下りて,海峡をひとまたぎ,といったふうである.
 それと対照的に,日本は国土のほとんどが山間部である.対馬海峡をまたいで朝鮮半島側も山間部であるから,勢いをつけて一またぎというわけにはいかない.地勢からして,大陸に向かって開かれていないのである.
 そんな日本ですら,文化的にも言語的にも大陸の影響を相当に受けてきた.ましてや,ブリテン島の文化や言語が大陸の影響を受けずにすまされるわけはない.英語史を考える上でも,ブリテン島の地勢の特徴を念頭においておく必要があるだろう.


Topographic Map of Great Britain

Topographic Map of Japan

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