スピーキング



スピーキングはおそらく、普通の日本人の中級学習者の人にとって、一旦取り組めばかなり伸び率の高いスキルではないかと思います。中学2年の終わりぐらいには、簡単な自己紹介や昨日あったことを話すことができるぐらいの語彙や文法は習っているからです。でも自転車の構造やパーツの名前をいくら勉強しても、実際に練習しなければいつまでたっても乗れるようにはならないですよね。

しかし、他の3つのスキルと比べて、スピーキングは最も訓練が難しいものでもあります。スピーキングの訓練にはさすがに相手がいないとどうにもならないのですが、今の日本では普段の生活で英語を使う必要も機会もほとんどないですし・・・。まずは自分のやり方で「英語を話す必要がある」場所を確保するところから始めないとしょうがないと思います。

練習場所確保のアイディア
  • 留学や一人旅などで海外に行く
  • 大学の英語学習関係のサークルに入る
  • 自分で会話相手を見つける(別に欧米人でなくても日本語ができなくて英語が話せる人であればOK。language exchangeという形で、日本語と英語を教えあうような形にすればお金はかかりません)
  • 英会話喫茶みたいなところに行ってみる
  • 日本語を一切使わない英語のクラスを履修する(外国語教育研究センターにはそういうクラスがいろいろあります)
訓練のポイント

 とにかくまねする
ネイティブや英語の流暢な人が使っている英語表現をよく聞いて、勝手に真似してみるということです。決まり文句や、こういう状況では普通こういう表現とかいうTPOに関する知識は、すべて教科書や参考書で学ぼうとしても無理があります。相手が自分に話しかけているときは「初心者向け」に話し方を修正していることも多いでしょうから、流暢な人が自分以外の人に話しているときや、誰かに電話をかけているときなどに集中して耳を傾けた方がうまくいきます。

もちろん洋画を見て表現をストックすることも可能ですが、出身地・職業・年齢・性格などがよくわかっていて、直接質問もできる知り合いの人の方が「勘違い表現」を学ぶ危険性は低いのではと思います。

 会話を発展させる
日本人学生でちょっとだけ英語を習っているような人に多いパターンですが、「英語で質問」→「相手が答える」→終わり、というのではちょっとさびしすぎます。具体例をあげますと「'What is your favorite movie?'→'Romantic Comedy.'→' I see.'→(沈黙)」みたいな感じです。そうじゃなくて、「それってどんなもの?」「たとえば?」「どうして?」などの「説明」や「具体例」や「理由」を次に質問して、会話をどんどん発展させないといけないわけです。日本語の会話だって普通はそうやって続いていくわけですしね。

何についてもいいのですが、自分の「個人的な意見(と、そう思う理由)」を言える人の方が相手に興味をもたれることが多いと思います。この「そう思う理由」のところが特に大事です。普通の会話なら別に立派で正しい意見である必要はまったくありません。意見の相違や知識の差があるなら、会話の中で質問したりしてお互いが修正していけばよいだけのことです。(そのために「具体例」や「理由」が必要なのです。)これについてはさらにこちらで

 くじけない
「ナゾナゾ英語」でも、沈黙よりはよっぽどましだということです。単語が出てこなければ簡単な単語で言い換える(paraphrasing)とか、具体例を出すとか(「こういう人がこうするときに必要なもの・・・」とかヒントを出して相手に推測してもらう)、とにかく根気よくやるしかないです。

あと、現地の英語圏の人は(特にアメリカ人)、ノンネイティブの英語に慣れていないために「はあ?」「なんだって?」みたいな、こちらの気持ちが萎えてしまう反応がかえってくることもよくありますが、「聞き取れないのは向こうがちゃんと聞いてないから」と思い込んだ方が何かとうまくいきます。あと、日本人の場合は「声が小さくて相手に聞こえてない」人が多いので、声をやたら大きくするだけで一気に通じることもよくあります。
おすすめ教材

 『起きてから寝るまでシリーズ』 アルク
かなりたくさん出ているようですね。このシリーズを知ったのはアメリカに行ってかなり後になってからですが、渡米前に入手できていれば、私の人生はもう少し楽だったかもしれません。会話相手がいなければ一人でつぶやけばよい、という発想は画期的なものだと思います。

 『ネイティブなら子どものときに身につける英会話なるほどフレーズ100』 アルク 2000年
タイトルどおりです。英語の会話相手はいるのだけど、うまい表現が浮かばずつい沈黙・・・というお悩みのある人によいのではと思います。