おすすめの参考図書


一般書店と図書館の両方で探してみましたが、選んだものはすべて慶應のメディアセンターに所蔵されていました。しかしこういう本は何度も参考にすることが多く、手元にあった方が何かと便利なので、自分で見て気に入るようなら購入してもよいかもしれません。

資料の調べ方・整理の仕方 

『自分で調べる技術―市民のための調査入門 』宮内泰介 岩波書店 2004年 
一般市民の人のために書かれたものですから、大変わかりやすくかつ実践的です。調べるだけでなく、調べた情報をどう整理するかについてもよく説明されています。
論の立て方 

◆『論理力を鍛えるトレーニングブック』渡辺パコ著 かんき出版 2001-2002年
図書館では一般書のところに入っています。Step 4 とStep 5では、経済学部の「英語Study Skills」で指導している「outline」とほぼ同じものが「ピラミッドストラクチャ」という名称で紹介されており、それを社会問題・経済問題を論じるうえで(そして相手のロジックの弱いところを突くうえで)どう利用すればよいかを実例つきで説明してあります。
 筆者のロジックツリーの作り方やバーチャル受講生解答の添削について必ずしも100%賛成というわけでもないのですが、本全体の情報の質を考えると、それはマイナーな意見の相違ということでよいのではと思います。ロジックの使い方を鍛えることがなぜ人の創造性を豊かにするかについて熱意あふれる論が展開されており、「物事を筋道立てて深く考える」ことを軽視して「直感」「感覚」でやたらとものを決めつける論調が世の中に多く見られるこのごろ、ちょっと嬉しく思いました。

◆『論理的な作文・小論文を書く方法 : ナルホドと読み手を納得させる』小野田博一著  日本実業出版社 2001年
 「結論を先に書け」「疑問文を使うな」「自分で自分に反論するな」など、もう私なんかが学生さんにいつも言っていることが全部書いてあるじゃんって感じです。どうしてそうする方がよいのか、とても丁寧に説明してあっておすすめです。よい例・悪い例の具体的なサンプルや、練習問題が多いのもよい点です。
 また、この本は日本人のコミュニケーションの傾向についての分析が充実しており、文化論としても興味深く読めました(留学生の人にもおもしろいかも)。ズバっと核心をついた指摘がたくさん出てきます。同じ著者で似たようなタイトルの本がありますが、こちらの方がうまく構成されています。

◆『論理トレーニング』 野矢茂樹著 産業図書 1997年
◆『論理トレーニング101題』野矢茂樹著 産業図書 2001年

この著者の論理学の教科書はなかなかの人気シリーズとお見受けしました。言語学でも経済学でも理論に関心がある学生さんは一冊は仕上げておくべきではと思います。

口頭発表

『「分かりやすい説明」の技術:最強のプレゼンテーション15のルール』藤沢晃治 講談社ブルーバックス 2002年 
よいプレゼンテーションには基本パターンがあるのですが、この本ではその基本パターンがなぜ必要かについて、懇切丁寧に解説されています。プレゼンテーションの構成が苦手な人、プレゼンテーションをより極めたい人の両方におすすめです。

『「分かりやすい表現」の技術:意図を正しく伝えるための16のルール』藤沢晃治 講談社ブルーバックス 1999年
ポイントは2002年の本と同じですが、ビジュアル(視覚資料)のデザインによりスペースが割かれているので、2冊そろえておいてもよいかと思います。

 レポート・論文作成

『はじめてのレポート : レポート作成のための55のステップ』伊藤義之著 嵯峨野書院  2003年
最初見たときは「全体的にはしょりすぎ?」と思いましたが、きちんと読んでみると「レポート締め切りが迫ってきてあせっている学生さん」も想定して書かれているなど、学生さんの立場に配慮したからこそ、ああいう構成になっていることがわかりました。そう考えると、これほど簡潔なプレゼンで重要な情報「だけ」が書かれている本は実際なかなかないだろうなと思います(書くのも非常に難しいと思います)。
 情報の「キモ」的部分が短い「ステップ」にまとめてズバリと書いてあり、その豪快な取捨選択ぶりに、読んでてスカッとします。特に「読むテクニック」の章には英文リーディングに応用できる情報もありますが、日本語しか読まない人にも非常に役に立つと思います。ただ、全体として「簡潔さ」を追求するあまりに説明が最小限になっていますので、「最初の1冊」的に読んでほしいと思います。

『大学生と留学生のための論文ワークブック』浜田麻里・平尾得子・由井紀久子 くろしお出版 1997年
タイトルからうかがえるとおり、懇切丁寧な説明です。留学生が間違えやすい日本語表現やスタイルの選び方についての練習問題などは日本人学生にはピンと来ないでしょうが、自分に必要な情報を選んで使っていけばよいでしょう。それでも相当の情報量がありますので留学生・日本人学生問わず、なかなか使える参考書だと思います。

パラグラフの作り方

◆『英語パラグラフ・ライティング講座』ケリー伊藤著 研究社 2002年
Study Skillsでしつこく練習したパラグラフの構造について、さまざまな練習問題を用いて丁寧に説明してあります。英語セミナー履修前・履修中の復習用などによいでしょう。第3章の'Kelly's 10 Rules of Plain English'は、簡単なことを簡単に表現することがなかなかできないという学生さんに特におすすめです。

『理科系の作文技術』木下是雄著 中央公論社 1981年(中公新書)
パラグラフの構成にうるさいのは英文ライティングに限ったことではありません。経済学や理論言語学など「理系」「文系」にまたがる手法をとる分野を勉強している人は、このような本にもしっかり目を通しておくべきかと思います。少し前に書かれた本ではありますが、日本の作文教育について言われている箇所、「文学に偏向している」「正確に情報をつたえ、筋道を立てて意見を述べることを目的とする作文の教育(中略)に、学校がもっと力を入れるようにならなければならない」(共に本文10ページ)は本当にその通りだなと思います。欧米の学校ではそのへんきちんとやってますから。論理的な日本語の使い方を子どもの頃からきちんと教えられていないことが、後に外国語を勉強したり、異文化圏の人と交流するときに大きな問題となっているように思うのです。



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