気晴しにおすすめ--読書メモ

                   (気晴しになるかは人によります)
(マンガと本が混在してます)
                                                            2009年1月 記

「大奥」 よしながふみ、 白泉社、税込み600円、ISBN(1巻めは)4-592-14301-9 (マンガ)
江戸時代。奇病で男が少なくなり、社会の労働力は女性が主体になった。トップも女性に
変わったが、男名のため、歴史上は男性社会が存続したように見えたのだ。将軍は女、
大奥には美男がずらっとはべる。発想も面白いが、女と男が入れ替わる過程が社会的、
歴史的に無理無くかかれていることや、男が女に入れ替わっても、まったく不都合が
ないことが体験的に納得できるのがすばらしい。徳川の代が変わるごとにいろいろな
タイプの女性が将軍となるが、政治的才能を発揮する人もいるし、色狂いや暗愚な将軍
となる女性も出現する。大奥とのからみでも、女性が優位になってもまったく違和感が
ない。戦争がなければ男は要らないということか? 現在これだけ首相がころころかわる
くらいなら、女性だって何ら問題なく首相がつとまるだろうという潜在意識が読者に
染み込んでいく、ある意味革命的なマンガだと思う。
現在連載中。終わりをどう決着つけるのか、心配なような楽しみなような。
(何しろ、以下でおすすめの「悪女」や「日出処天子」では最終巻で
作者が息切れしてましたから)


「もやしもん」石川雅之、講談社、イブニングKC、533円+税、現在7巻まで(マンガ)
大学の農学部を舞台にした学園マンガ。農学部ならでは(本当か?)の醸造装置や、
かわいい形の箘たちがたくさん出てきて、発酵や醸造、お酒などのうんちくも得られる。
このさいストーリーはどうでもいいでしょう。


「のだめカンタービレ」 (マンガ)
あまりにも有名なので省略。わたしはイタリアに1年間滞在したときに、これ(マンガ版)と
十二国記(小説)をもって行きました。


「十二国記」
(未完成)



「デルフィニア戦記」  (全18巻)  茅田砂胡  中央公論社 (1冊800円位)

少女の身体をしているが少年の精神をもつリィと、青年ウォルの騎士道あふれる
戦争物語。型破りな人物の描き方がとても魅力的で、笑いつつ、戦う人生に
復帰する気力が出てくるご利益つき(私は復讐を正当化するくだりに感心した)。
みかけは普通の女の子(しかも美人)なのにとんでもなく腕力があり、戦士としての
腕は人間以上、走るスピードは馬と同じ、さらにいろんな超能力があり、、、、
そして化けものあつかいされることに苦しんで、対等な友達を求める切実な心は、
日本の現代のオトコ社会に生きる女性にはとても共感できるはず。みかけは女で
中身が男の人物がふたり、それに男装した女性二人も出てくるが、それぞれに
考えは違うし、まわりのとらえ方も異なる。物語の場面設定は中世の架空の
騎士社会。それなのに出てくる人物たちの心理はとても日本的だが、そこはそれ
文句を言ってはだめヨ。何といっても型やぶりな人物を書くには場面を身分社会に
するのが一番だし、所詮わたしたちは日本人。とことん小説を楽しむには、日本の
精神土壌に立脚しなくては、理解できないし、意外性も笑いも楽しめないからね。


「スカーレット・ウィザード」(4巻)茅田砂胡   上と同じ
こちらは宇宙を舞台にした桁はずれの夫婦の物語で、二人の関係と彼女の発想が
うらやましい。
(なおこの後に書かれたシリーズ「暁の天使たち」「クラッシュ・ブレイズ」では、
スカーレット・ウィザードとデルフィニア戦記の世界を合体してしまったために、
物語がうまく展開できなくなり、主人公のキャラクターも生かしきれていない。
物語の設定が過去の遺産から一歩も出ていなくて読むのは時間の無駄というもの。
まったく別のシリーズを立ち上げた方がいいと思う。)
                                                              2000年7月記


「正しい恋愛のススメ」 一条ゆかり 集英社 ヤングユーコミックス5巻+番外編
                                                 1冊505円(マンガ)
娘が中学生の時、これを友達から借りてきたので、私も読んでみて驚愕した。何もの
にもとらわれることのない倫理感の中で、少女たちの自己形成が行われている。
将来どんな日本になるのだろう。買春ありホモセクシュアルあり、性のモラルとか
規範というものがない。どうせこの国には、男社会のたてまえのモラルしかないの
だから、、それらをいっぺん全部まっさらにして、みんなでしっかり恋をして
まじめに悩むのはよいかもしれない。娘は主人公の娘に感情移入し、私はその母親に
感情移入した。いい男も出てくるからね。で、それ以来お気に入りのマンガになった。


                                                            2000年1月記
「恋のめまい 愛の傷」 一条ゆかり  集英社 ヤングユーコミックス全2巻
                                                     (500円×2)(マンガ)
自分の意思で人を好きになったり、嫌いになることができたらいいのにと、
誰しも思ったことがあるだろう。この物語はいい男といい女がたくさん出て来て
まじめに悩む恋愛マンガである。苦しくてせつなくて泣ける恋愛ストーリーを
楽しんで気分転換しよう。マジで恋愛するのって、すごーくエネルギーが
要るものだからね。そのエネルギーを頂戴してしまう。
性のモラルがあるようでいて、実は何にもないこの国では、結婚について
考えるときのお手本が少ない。恋愛の原点に戻って考えるのにもいいのでは。


「日出処天子」 山岸涼子 (マンガ)
聖徳太子の若い頃の物語。政治的天才にして超能力の持ち主として書かれている。
皇国史観にとらわれない自由な発想がすばらしい。エネルギーがとても溢れる物語
なので、落ち込んで少し気が弱くなった時に読むと、効き目があります。私はいざと
いう時の常備薬として保管し、アメリカに長期滞在した時にも持っていきました。


「悪女(わる)」 深見じゅん(マンガ)
三流大学を四流の成績で卒業して下等なコネで一流商社に入ったまりりんが
一目惚れした相手に近付きたい一心で出世していく物語。出世の原動力が
恋というのも新しい。次から次に独自の発想で難問を解決していくので、
「優秀さ」とは何か?と、迷っている人におすすめ。疲れを知らない明るさと
楽天性とエネルギーはパワーになる。難点が一つだけある。最終巻のあの
不自然な大団円はやめてほしかった。できれば書き直してほしい。



「この女に賭けろ」 (作)周良貨、(画)夢野一子、講談社 モーニングKC433(マンガ)
上で紹介した『悪女(わる)』は通常の出世コースから巧みにはずれている
物語だが、この話は、総合職で銀行に入社した女性が、仕事上の難問を解決し、
ストレートに出世していく物語。たぶんこの種のものでは類がない。従来の
物語だと、美人で頭が良く仕事ができる女性は、性格が悪いか、男にもてない、
という設定しか許されなかった。でもこの主人公は、人望もあり、すてきな
恋人もいるのだ。主人公の志の高さ、世の中の流れを見通す力の強さが、まっすぐに
描かれている。女性で背が高いことが、プラスの要因として扱われているのも
とても新しい。残念なことに主人公が結婚しないうちに、15巻で終ってしまった。
日本の社会では、いまだに、幸せな結婚をして、仕事もばりばりできる女の人の
物語は受け入れられないのだろうか。(数年前に絶版になったらしい)


                                                       1999年記
「妊娠小説」  斉藤美奈子  ちくま文庫さ13-1 (680円) 

おそらく男性のかなりの部分は、この本をぱらぱら見ただけで、生理的
嫌悪感を感じるのではないだろうか。なにしろ、日本の近代文学を、すべて
『望まない妊娠』が出てくるか、という一点だけでめった切りして
分類してしまうのだから。たとえば森鴎外は『舞姫』で、妊娠小説の父として、
高く評価されている(望まない妊娠はそれまで女の問題だったのが、ここでは
主人公に逃げ場がなく、エリスの妊娠に悶々とする主人公を、近代的自我として
高く評価している)。望まない妊娠をめぐる法律(堕胎罪など)の変更(=改悪)が
あると、3年後に妊娠小説のブームが来るなどの社会分析も面白い。そして
感心するのは、各小説を受胎告知や妊娠中絶などの要素をめぐって徹底的に
分析してしまう、その徹底さと、『僕小説』『メンズ系妊娠小説』などの
ネーミングのうまさである。この感覚を、バトルのための新しい武器として常備
できたらいいなと思う。

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The Leader In You   - How to Win Friends, Influence People 
   and Succeed in a Changing World
       Dale Carnegie & Associates. Inc. 著  POCKET BOOKS (和訳が出ています)

仕事で成功するために
◎成功への第1歩は、あなたの中のリーダーシップの強さを確認すること。
◎信頼関係のうえにコミュニケーションを築くこと
◎仕事への意欲は強制できるものではない。良い仕事をしたいと皆に思わせること
◎仲間の行動に心からの興味を示すことが、最も効果的な方法である。
◎他の人の視点からものを見よ
◎人の話を良く聞いて学ぼうとする態度ほど、説得力のあるものはない。
◎ティームワークを成功させる人から将来のリーダーが生まれる
◎心から他の人びとの仕事を尊敬することが、仕事への意欲をわきたてる
◎人はお金のためにも働くが、みとめられて、褒められて、報酬があれば、
   それ以上の仕事をする
   (『やりがいがあればもっと働く』と日本人むけには訳すべきでしょう)
◎誤りはすばやく認め、批判はゆっくりと。そしてどちらも建設的に
◎魅力的な目標を設定すること。明確で、やる気が出て、実現可能なもの
◎リーダーは決して肝腎要の点を見失ってはいけない。いつも大きな目標を
  見つめていること
◎よい仕事をするためにも、仕事と遊びのバランスはしっかりと
◎いつも前向きの姿勢を保つこと。強さは後向きの姿勢からは生まれない。
◎必要以上に悩まないこと。心配事に見合う大きさの心配だけして、
  エネルギーを前向きに。
◎熱心さは武器になる

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「百合子、ダスウ"ィダーニヤ」  湯浅芳子の青春 
            --- 沢部ひとみ  学陽書房 女性文庫 (780円)

働く女性のお手本がとても少なかったちょっと前の時代に、宮本百合子の小説は
一つの軸をなしていたと思う。伸子シリーズで育った世代の人にはご存知の、
吉見素子のモデルとなった人がロシア文学者の湯浅芳子。伸子の側からみた世界とは
反対側の世界が書かれていて、ああそうだったのか、と納得する点もあるだろう。
『道標』以後、吉見素子の存在がなんとなく消されている不自然さの説明も
つくし、あの時代に百合子が、家制度や男女の人間関係についてかなり自由な
考えを持てたのは、男や女という呪縛から離れていた湯浅の影響だったのか、
などと、今までの疑問がこれで氷解する。
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企業のパラダイム変革  加護野忠男  講談社現代新書890

なぜ新しい産業は、既存の大企業ではなく、小中企業、辺境の企業から
起こるのか。それは産業構造の変化に応じて方向転換をすることが
大企業では難しいのは、慣性が大きく、人の意識がなかなか変わらない
からでもある。パラダイム変革のためにはどうしたらいいのか、
パラダイム転換を成功させた大企業の例を示す。トップの役割、ミドルの
役割がそれぞれの場面で重要で、かつその連係がうまくいくことが大切。
まず一つの例で成功して、パラダイム変換の成功を目に見えるようにし、
連鎖的に波及させること。
前半はパラダイムの説明なのでやや冗長だが、後半の企業の実例が面白くて
参考になる。


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(C)1999 M.Kato
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