2018年夏 イタリア アジアゴ天文台滞在記 ふたたびアジアゴ天文台に滞在した。暮らし方については10年前と基本的に同じなので、 イタリア パドヴァ研究滞在記 の7月 のところをみて下さい。 11年前から変わったところと言えば、この素敵な並木が切られて無くなっていたことだ。2017年
2018年 (左) 天文台の正門を入ったところ。(右)その少し手前だが同じ道。並木がなくなった。 ちょうど木材にして売るのに適した樹齢になったそうで、天文台周辺の木がごっそり切られていた。 2年前にここに来たときにはすでに切られていて、今はひこばえがたくさん出ている。切株の年輪を 数えたら50年を超えていた。年輪は南側で間隔が太く、坂道で斜めに生えているからだろうか年輪の 幅は1年分で2センチもあった。 宿舎の裏側の木もなくなっている。
2007年
2018年 裏側
ペンナー側からみた景色。正面中央がわたしたちのキッチン。木々に隠れていたドームが2つともまる見え。 村の灯が観測のじゃまにならないのだろうか。木の持ち主は天文台ではないそうなので、文句は言えないか。 他に変わったことといえば、構内に日時計が3つ設置されていた。デザインはまちまち。晴れた日にチェック したが、夏時間で1時間ずれていることを除けば、誤差は15分くらいだった。
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私たちは理論家なので、昼間は研究(論文を書いたり数値計算したり)して、あきると、肉や野菜を買いに アジアゴの街へでかける。天文台裏の牧草地をつっきってペンナーという小さな村に、牛乳やヨーグルト、 チーズを買いに行くこともある。ヨーグルトは11年前にはなかったが、とてもおいしい。バターもとても おいしいことを今回発見した。塩分が非常にすくなく、減塩を命じられている私にはありがたい。イタリアの パンは塩が少ないので、久しぶりにバター+はちみつ+パンを楽しむ。宿舎にキッチンがついているので 自炊する。 アジアゴの街は軽井沢のような避暑地で、夏には多くの人が訪れる。ハイシーズンが過ぎると あちこちで催しが開かれる。
アジアゴ国際彫刻コンテスト
Concorso internazionale di scultura su legno Citta di Asiago 22/27 agosto 2018 11年前は滞在期間がずれていたので気がつかなかったが、2年前に来たとき、彫刻コンテストが あると知った。アジアゴの街中(舗道上)で行われる彫刻ショーで、作家が1週間にわたり、 彫刻作品を作っていく過程を観光客も見ることができる。いったい彫刻がどのように作られるのか 見ていて面白いので、食料品の買いだしがてら、毎日見物に行った。ちなみに天文台(山の上)から 町中まで歩いて20分くらい。初日
街のあちこちに専用スペースが設けられた。 丸太が1本ごろん。丸太のかわりに板が一枚のところもあるし、 板と丸太の組合せもあった。誰も来ていないし、名前の掲示もない。次の日
板に鉛筆で簡単なスケッチ。あるいは丸太が少し削られていただけ。写真撮らず。三日目
それぞれ形が見えてきた。![]()
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ここの人たちは一枚の板から出発。昨日は板にスケッチしただけだったのに、けっこう進んだ。
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こっちは仏像か?
机の上の丸いのは何だろう? 丸太組。左の時計は13時まである。
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左は1つのテントで2人いっしょ。この女性像の作者はおととしも女の人の横顔を 作っていた。最終日に見にいったら、色が塗られて印象ががらっと変わったっけ。 奥のはジャンヌダルクというタイトルの彫刻。
はさみで何を切る?
切株が白く塗られた。 (左)テントは市庁舎前の広場にあり、奥に噴水と銅像が見えている。
四日目
かなり進んだところもあり、前日とあまり印象が変わらないところもあり。![]()
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縦につないだ木が、横から見ると2本になっていた。(右)緑に塗った葉っぱのようなものが、机の下に見える
見本を見ながら作っているが、まったく同じになるわけではなさそう。
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これは何だろう?とみんな見ている。
5日目
あと少しで完成。![]()
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やっぱり仏像か。 (左)わたのようなものが出現した。これは何? 二本の棒と緑の葉っぱのようなものは相変わらず。 毎日見ているのに、何になるのかわからず、ここが一番たのしかった。
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はさみで切っているのは何? 漫画もそうだが、作者と作品の雰囲気の関係性がなんとなくわかる。 ついでに言えば、天文学者本人の性格と論文の方向性も関係がある。 几帳面で神経質だとか細かいとか、大胆だとか。ちなみに私は 「大胆に本質をとらえつつ緻密な論理展開」を目指している。
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6日目
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色がついた。 すでに完成して柵の外に出されていた。道具も片付けてあり、作者もいない。
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時計も鎖も元は一本の丸太。
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完成しておしゃべりする作者。
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ふわふしたものが何か、ようやくわかった。
柵の外に作者の名前とタイトルが掲示される。このタイトルは「2 AMICI VMA TERRA VMA STORVA」 作者:FABRIZIO MURARO, CANOVE DI ROAMA (VI)
最終日
市庁舎前広場にすべての彫刻が勢ぞろいした。 さて受賞したのはどれでしょう。 ちなみに、過去の受賞作はこれ。羊の群れ 黒い板に月が4つある作品を作ったペアですね。
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時計が黒くぬられてる。 左のタイトルはジャンヌ・ダルク。
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(左)タイトル Le Radici Raccontano (根が語る) 作者は Manuel Rossi, Asiago (この町の人でした),
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さて受賞作品はどれ?
次の週
受賞作が市庁舎に展示されていた。制作者 Marta Zucchinali, たんぽぽ Treviglio (BG ベルガモ:ミラノの近くの人)でした
キッチン
下の写真にちょっと見えるのが天文台宿舎にある私たちの部屋のキッチン。食器やフォーク・ナイフも ある。ここには写ってないが、スパゲッティ用のずんどう鍋とざる、チーズおろしもある。食器は もちろん洋風スタイルで、茶椀や箸はない。手前の平たい桃がおいしい。そのうしろはステーキ用のチーズ(塩分が少なくて嬉しい)と全粒扮のパン。 その手間が地元産のはちみつ(アカシア)1kg入り瓶、ハムの切り落としパック。玉子、いんげん。 丸ナス(輪切りにして油で焼き、醤油を1滴たらすとおいしい。醤油は持参。宿舎にはオリーブオイルしか ないので、とうもろこしのオイルを買った。手前は Pennar (すぐ裏の村)産のヨーグルト。後ろに見える ドリップ式のコーヒーフィルターは持参したもので、日本茶をいれる時にも使う。水道水も買った水も 硬水でおいしく煎れられないので、水を一度沸騰させて冷やしたものをフィルターで漉しておく。 オールブランは食物繊維が大事なわたし用。 夫はさくさくと長大論文を書いている。私が研究に行きづまって、ふてくされていると、夫がちゃっちゃっと 料理してくれる。今回の滞在では夫が7割、私が3割というところか。夫の料理は骨つき豚肉を煮こんだ野菜 スープとか、鰈(かれい)の煮つけ(油であげてから煮る)、小さなイカをフライパンで焼いたもの等。丸なすの 輪切りを焼くのも夫。私はなすの皮をとり、醤油を一滴たらすだけ。私が作った料理は、牛テールの 中華香料煮込み(醤油味)や、手羽元(と玉子ときくらげ)の煮込みなど(香料は持参)。 こっちの玉子は、殻がとても丈夫。鳥の手羽元は日本の2倍の太さ。スーパーで牛テールをみつけた 時は、大きくて驚いた(つまり牛のしっぽのつけねに近い方ね)。周囲の脂肪がきれいに取られていた。 1時間半煮ても日本のみたいにばらばらにならない。日本のなら40分というところか(家ではちょっと煮て 新聞紙と毛布にくるむのを3回繰り返すので、長くは煮ない)。日本のはこってりとした味に仕上る。 こちらのは油分もなくさっぱりした肉の味が楽しめる。後日、町中の牛肉専門店には、細い牛テールが 売っているのを発見した。
いちじくは小粒だが甘くておいしい。右はイタリア式コーヒーメーカー(キッチンの標準装備)。うしろの袋は それぞれインゲン、もも、パンが2種。個人商店で買うと、野菜でもパンでも紙袋に入れてくれる。マイクロ プラスチックのごみ問題は起こらない。 数年前のことだが、「あんたは運がいいわね、料理が出来るダンナで!」と独身の女性に言われたことがある。 ちょっと考えればわかると思うが、そのへんに料理のできる男がころがっているわけがない。まして30年以上前の 日本だ。運だけで料理のできる夫が手にはいるはずはないだろう。当然、若いころはバトルの連続だったのだ。 それが功して、今では何もいわなくてもあたりまえに料理を作る。
ペンナー村方向
朝焼け
昼間 (左) キッチンの窓からみた朝霧。木がなくなり山がよく見える。 (右)宿舎2Fのドームに行く渡り廊下にて。ペンナー方向を見る。 山上の右はじにエッカー望遠鏡のドームが光っているが、小さすぎてわからないかも。 天文台の裏がわにある小さな村(Pennar)
ペンナーのチーズ屋さん。 昼休みの時間なので、だれもいない。いつもはベンチにお客さんたちが座って おしゃべりしていたり、車が停まっていたり。
牧草地と牛でほっこり
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アジアゴの街へ降りて行く途中にある薪屋さん 牧草を苅って、ひっくり返してかわかし、寄せたところ。このあと、巻きとって牧草ロールにする。
天文台のすぐ下 夕方男の人が笛をふくと、牛が一列になって帰っていく。犬もちょっと牛を誘導するが、 勝手に牛が宿舎に帰るようにみえる。いくつか区画に分かれていて、昨日はこっち、 今日はこっち、と食べる場所を変える。 天文台宿舎のすぐ裏の牧草地にて。
牧草ロール。 とても数値計算で行き詰まっている人とは思えませんね。
(2018.9)
Copyright M. Kato 2018