インターネットライブカメラの構築

松本直記*  高橋尚子**

1.はじめに

コンピュータに接続されたカメラからの映像をインターネット上に供給する,いわゆるインターネットライブカメラはインターネットの普及とともに増加しつつある.それらの画像を利用することで,日本のみならず世界中のリアルタイムな風景を,教室に居ながらにして知ることが出来る.各地の様子をリアルタイムに知りうる状況をつくることで,松本ほか(1997),手代木(1997)の報告にあるように,気象や天気の学習の分野において飛躍的な効果をもたらす.

このようにインターネットライブカメラは増えつつあるが授業で活用するにはもっと密度が高い方が望ましい.教材になりうる気象システムに伴う現象はどこで発生するか分からないためである.例えば寒冷前線の前後での天気の状況の違いを知るためには適当な位置にカメラが存在している必要がある.

インターネットライブカメラは教育効果の向上を期待できるが,これまでは実現運用するには高価な機材と技術が必要であった.しかし近年では多額の投資をせずとも実現可能なものになってきている.ホームページを持っているのであれば簡単に実現可能である.本稿の目的はインターネットライブカメラが比較的簡単に実現するのを具体的に示し,気象教育の発展を期待するものである.なお,以下紹介するコンピュータ環境はOSWindows95を使用している.


図1 本報告における実験環境

2.ソフトウェア

以前ではカメラからの映像をインターネット上へ提供するには自分でプログラムを作成する必要があったが,最近ではカメラの映像を画像ファイルとして自動的にWWWサーバへFTP転送するソフトウェアがあるのでインターネットライブカメラを実現する上で技術的に難しい部分は非常に簡単になった.例えばWebcam($25)とWebshot($29.95)というシェアウェアがある.なお,機種との相性があるらしく,筆者が使用したコンピュータ(東芝Brezza PV-1009JA)ではWebshotは動作しなかった.東芝Brezza PV-1009JAはあらかじめビデオキャプチャ用のインタフェースを持っている機種である.そのインタフェースの特殊性により動作しなかったものと思われる.

コンピュータはWWWサーバに専用線でつながっていることが望ましいが,電話回線でのダイヤルアップ接続でも可能である.上記,Webcamには一定時間おきにダイヤルアップ接続を行なって,電話線を介してWWWサーバ上の画像情報を更新し,接続を切断する機能があり,ダイヤルアップ接続環境下でのライブカメラの実現を可能にしている.


図2 シリアルポートカメラとモデム接続による環境

ダイヤルアップ接続機能を持ったライブカメラソフトウェアとしては他に,「スナップマン」(¥22,000)が(株)HIDから発売されている.しかし,これはソフトウェアの値段が高い上にコンピュータとカメラの接続に米国PLAY社の「SNAPPY」という装置を必要とする.

ソフトウェアについての情報を表1に示す.

表1 ライブカメラソフトウェアの情報一覧

3.カメラ

コンピュータのシリアルポートに接続するだけで映像をコンピュータ上に表示することの出来るカメラを使うのが最も簡単である.例えば株式会社マクニカから発売されているEnhanced CU-SeeMeに同梱されているRucola,株式会社メディアヴィジョンから発売されているColor QCAM,(株)コンテックから発売されているD-CAM,デジタルインフォメーションテクノロジー株式会社から発売されているDI-CAM001などがある.

普通のビデオカメラをコンピュータに繋いだ方が画質ははるかに良い.その際には,ビデオ信号をコンピュータで扱うことが出来るようにするハードウェア(ビデオキャプチャボードなど)が必要である.ビデオキャプチャボードは最近では格段に値段が下がり,安価なものでは¥20,000程度から販売されている.筆者が使っているコンピュータは安価な普及機であるが,TVチューナーボードを標準装備しておりビデオ信号を受け付けることが出来るので,特別なハードウェアを追加することなくビデオカメラを繋ぐことが出来た.

シリアルポート接続カメラについての情報を表2に示す.

表2 シリアルポート接続カメラの情報一覧

4.htmlの設定

WWWサーバ上の特定の名前のファイル(指定可能)がライブカメラソフトウェアによって自動的に更新されるので,html文書にはそのファイル名を指定するだけでよい.なお,この実験では"webcam32.jpg"というファイルがライブカメラソフトによって自動生成される画像である.

本校地学教室のホームページの場合,次の一行を追加しただけである.

<IMG SRC="./webcam32.jpg" hight=120 width=160>


図3 慶應高校地学教室のホームページ

画像を更新する間隔はライブカメラソフトウェアで設定できるが,ブラウザで再読み込みをしなければ新しい画像の表示はされない.本校地学教室のホームページ上にある,ライブカメラ画像を自動更新するページ(図4)のhtml文書を以下に示す.再読み込みを自動でさせるには,html文書のHEAD部分に図5の@の一行を挿入する. contentのあとの数字が自動読み込みをする間隔(秒)である.


図4 ライブカメラの映像を60秒に1回自動更新するページ

<HTML> html文書の始まり

<HEAD> ヘッダー部分の始まり

<meta http-equiv="Refresh" content="60"> @

<TITLE>Keio Earth Science Dept. LIVE</TITLE> タイトルの設定

</HEAD> ヘッダー部分の終わり

<BODY background = "./back.jpg"> 本文の始まりbackgroundは背景画像の設定

<CENTER> これ以降を中央揃えにする

<H1>慶應高校地学教室からの景色</H1> 表題の設定

60秒で自動更新します<br> 文章 および 改行

<p> 改行

<img src="http://www.hc.keio.ac.jp/earth/webcam32.jpg"

width="320" height="240"> <br> 画像表示の設定widthおよびheightは画像サイズの指定

<br> 改行

<a href="./index.html">メインに戻る</a></p> リンクの設定 および 改行

</CENTER> センタリングの終わり

</BODY> 本文の終わり

</HTML> html文書の終わり

図5

5.今後の展望

インターネットライブカメラの設置されている量が増加することにより,リアルタイム画像を利用した授業の機会は飛躍的に増加するだろう.こういった生活に密着した情報は教育目的以外にもいろいろな利用の可能性が考えられる.例えば自分のいる場所のやや西の地点について天気の様子を知ることにより,降水の有無など簡単な天気の予測を手軽に行うことが出来るようになる.また,山本(1997)によってライブカメラによる霧情報収集の試みがなされており,ライブカメラの密度が高まることで情報源としての魅力が高まることを示唆している.

 比較的簡単にインターネットライブカメラの製作が出来ることが分かった.拙稿がライブカメラの普及と気象教育の発展の一助になれば幸いである.

磯野康孝・蔵守伸一(1997):HTMLハンドブック:ナツメ社

松本直記・坪田幸政(1997):インターネットを利用した天気の学習−ライブカメラによる観天望気−:地学教育,5019-29

手代木 英明(1997):インターネットを活用した「5年 天気の変わり方」の学習 定点観測カメラ画像の活用について:日本地学教育学会第51回全国大会要項:42-43

山本 哲(1997):インターネットによる霧情報収集の試み:日本気象学会「天気」に投稿中

松本直記・高橋尚子:インターネットライブカメラの構築

[キーワード]インターネット・ライブカメラ・気象教育・コンピュータ

[要旨]天気の様子をインターネット上にリアルタイムに提供するライブカメラの構築を行った.シェアウェアを利用することによって比較的簡単に実現することがわかった.またカメラやインターネットの接続も特に高価な機器や特殊な環境を必要とせず,一般的なコンピュータ環境でも低価格でライブカメラが実現可能なことを示した.ライブカメラの密度が高まることによって新たな教材の可能性を示唆した.

Naoki MATSUMOTO and Noriko TAKAHASHI: Constructing the internet live camera.


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