リアルタイム気象データの提示

―低価格で実現するマルチメディア気象教育―
松本直記
MATSUMOTO naoki
慶應義塾高等学校


 気象教育・気象観測・マルチメディア・天気図・ひまわり画像・インターネット
I.はじめに
世の中の気象に関する関心は気象予報士の設置などで盛り上がりを見せているが、気象教育に関しては充実しているとは言い難い。気象教材で、最も生徒の興味を喚起できるのは、「今」起こっている現象であろう。しかしながらリアルタイムの気象データを提示するのは非常に高価なシステムが必要であった。最近では気象教育に役立つ気象データの提供サービスやインターネットの利用、低価格な観測システムがある。本校ではそれらを使って気象教育を行い、また掲示することによって気象に対する興味を喚起するのに一役買っている。

2.定点観測データのリアルタイム提示
今、現在の気象データを取得し、表示するシステムは、非常に高価なものであった。最近ではそれが安価に実現できる。米国Davis社のウェザーモニターUは現在の気圧、風向、風速、室内外気温、室内湿度、室内露点(オプションで降水量、室外湿度・露点)を測定し表示することができる。製品添付の表示装置は力不足の感があるが、コンピュータの通信ポートにつなぐことによって、得られたデータをリアルタイムに各種グラフにあらわすことができる。気温や気圧の変化傾向が一目瞭然に知ることができ、またそれらのデータをコンピュータのハードディスクに保存でき、自由に加工することができる。そして、それらのグラフと天気図を比較して、前線に伴う気圧・気温・風向きの変化や低気圧の通過経路の違いによる気象要素の変化の違いを、実体験とともに理解することができる。気象教材としても、日頃の気象情報提示の手段としても効果的である。本校では地学教室の前に設置されたウェザーモニターUのディスプレイを前に生徒たちが今後の天気動向について話している様子をしばしば見かける。

3.天気図等の取得
日々の天気図はこれからの気象の変化を考えるうえで非常に重要な判断材料を与えてくれる。地上天気図に関しては、以前は短波Faxを受信するか、NHKラジオの気象通報から作成、または新聞の粗い天気図を利用するしかなかった。最近では、気象予報士や合格を目指す人を対象にしたFaxサービスが行われているので地上天気図のみならず気象短波Faxを普通のFaxで得ることができる。代表的なものにアスキー社やハレックス社のFaxサービスがある。両者とも地上天気図の他、高層天気図や天気予報に必要な解析図などが、簡単なFax操作で手に入れることができる。Faxさえあれば初期投資はほぼ不要なことと、大気状況に左右されず受信できるので短波よりは画質がよいのが利点である。また、Faxモデムを介してコンピュータへ画像ファイルとして受信すれば画像ソフトを利用して、いろいろな活用が可能である。たくさんの天気図を利用するのであれば、定額契約でアクセス制限なしのハレックスのサービスが割安であろう。アスキーのサービスは利用頻度に応じた様々な価格設定があるほか、契約しなくてもダイヤル92でのサービスがされているので「今日の天気図だけ欲しい」といった利用に適している。 通信費なしに多様な気象データを配信するサービスが「ウェザーニュース」によってなされている。(商品名dekitaくん)CS放送を使い、コンピュータ上へリアルタイムかつ自動的に、ひまわり画像をはじめ各種気象データが表示される。月々データ管理料が必要だがリアルタイムデータが定常的に必要であるならばサービス内容を考えると非常に魅力的である。(他にアンテナやチューナーの初期投資が必要である。なお、モデム接続のサービスもある。) このサービスにおいてや、後に述べるインターネット上のサービスにおいても「ひまわり」画像については赤外線画像のみの提供であり、雲厚を知る上で重要な可視光線画像の提供はなされていない。

4.インターネットWWWの利用
本校では人工衛星「ひまわり」の画像を朝日新聞のインターネットサイト(www.asahi.com)より取得しいている。また、気象庁発表の天気予報をCRC社(www.crc.co.jp)から、米国NBC社(www.intellicast.com)から世界の雲画像を得て毎日掲示している。これらの画像によって、生徒に身近な気象からグローバルな大気の動きまで考えさせることができる。
 以下、代表的な日本における気象情報サイトを紹介する。ひまわりの画像については国立がんセンター(ncc.go.jp)、高知大学(www.is.kochi-u.ac.jp)が有名である。朝日放送(www.asahi.co.jp)は気象専門サイトと言ってもよいほど豊富かつ有用な情報を提示している。特に西日本のレーダーアメダス合成図をほぼリアルタイムに掲示する姿勢は素晴らしい。関東のレーダーアメダス合成図は、お天気セブン(www.netsurf.or.jp/ewi)で得ることができる。ウェザーニュース社(www.wni.co.jp)は総合的な気象情報を提供している。日経新聞の気象ページ(web.nikkei.co.jp)では簡単な天気概況と、その解説が毎日掲載されており、「日々の天気図を教室に掲示し授業のはじめに今日に天気について一言述べる」なんて野望を持つ教師にとって強い味方になるだろう。
 アメリカでのインターネットを利用したデータ供給は日本におけるそれとは隔世の感がある。政府機関や公立大学が手持ちのデータを積極的にインターネットに載せている。様々な気象データがインターネットで供給されている。パデュー大(thunder.atms.purdue.edu)やイリノイ大( www.atmos.uiuc edu)が有名である。フロリダ大は気象関係データの巨大なGopherサイト(thunder.met.fsu.edu)を持っている。気象情報会社も、AccuWeather社(www.accuwx.com)を代表に気象データの提供やデータを使った教育について非常に熱心である。売り物の気象データを数時間遅れで無料で配信している。また、情報価値の高いリアルタイムデータでさえも教育用にテキストとともに非常に安価で提供されている。日本の気象情報会社においても本来無料で気象庁から配信されるデータに値段をつけるのでなく気象教育に貢献する努力をして欲しい。

5.慶應高校地学教室のインターネットホームページ
本校では諸氏の努力によるインターネット上の気象データを日々掲示し、生徒に対する気象への興味を喚起している。我々のホームページでは、地学教育に用いた各種データを掲示してきたが、より気象教育に貢献するという意味で、本校で直接受信している「ひまわり」の赤外線画像・可視光線画像、地上天気図・高層天気図を毎日ホームページ上に掲示している。(www.ifnet.or.jp/~keio)
また、この報告に書かれている情報の詳細も掲載する。

to Matsu Profile