hellog〜英語史ブログ

#6246.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化[voicy][heldio][helwa][notice][helkatsu][hel_education][sobokunagimon]

2026-06-03



 昨日2026年6月2日,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5周年を迎えることになりました.丸5年間,毎日マイクやレコーダーに向かって英語史を語り続けてきたことになりますが,この機会に Voicy のアナリティクスから抽出されたデータを皆さんと共有しつつ,この5年間の heldio の進化を振り返ってみたいと思います.アナリティクスは5月28日時点のデータを用いています.
 まず配信回数ですが,5年間で2,340本を配信してきました.これは毎朝6時の heldio 通常配信のほか,生配信や特別配信,そしてプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の配信を加えた総数です.我ながら,英語史という単一テーマで,よく持ったと思います.単なる毎日更新にとどまらず,英語史というニッチな学術分野において,これだけの高頻度で5年間メディアが回り続けたというのは,リスナーの皆さんにとっても「え,そんな本数だったの!?」と驚かれるのではないでしょうか.
 では,リスナーの皆さんにとって,heldio への「入口」となったのはどのような回だったのでしょうか.歴代の総再生回数および新規リスナー獲得数のランキングを見てみると,きわめて一貫した heldio の原点が見えてくるように思われます.
 不動の歴代1位に君臨しているのは,記念すべき初回配信である「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」(合計リスナー3,104人,新規獲得1,757人)です.これは完全に他を圧倒する入口回となっています.ここで重要なのは,この回が扱っているテーマが a/an の使い分けという,中学1年生で習う初歩的で素朴な疑問である点です.ここから分かるのは,heldio の原点がハードルの高い専門知識の講義ではなく,誰もが抱く学校英語への違和感や日常の小さな謎に寄り添う姿勢だったということです.
 もう1つの興味深いデータとして,2022年の「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」(新規995人)と,2024年の「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」(新規989人)という,2回の自己紹介回がどちらもヒットしている現象が挙げられます.リスナーさんの関心が,英語史そのものだけでなく,それを語っているパーソナリティにも向いているものと理解してよいのでしょうか.その辺りが謎ではあります.
 また,外部コミュニティとの接続という点では,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」さんにお招きいただいた際の 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」(新規609人)が爆発的な流入を生みました.「英語史をお茶の間に」というモットーが,専門界隈の外へと届いた象徴的な瞬間でした.さらに,純粋な歴史の話題だけでなく,「#729. なぜ英語を学ばなければならないの?」(新規558人)のように,英語教育や現代人の英語観を照らす類いの話題も,強い新規流入を呼び込んでいます.トップに近い配信回を眺めまわしてみると,結局のところ違和感を共有する「英語に関する素朴な疑問」(sobokunagimon)が核であったことが示されています.
 一方で,年別の平均リスナー数の推移を見ると,数字の上では減少傾向にあるように見えます.これには様々な原因があると思いますが,Voicy と同一のコンテンツを,他の音声配信プラットフォームでも配信し始めたので,Voicy 単独でのリスナー数が減ったということが大きいように思われます.もう1つは,リスナー集団の中心がライト層からコア層へシフトしてきたようにも感じます.リスナー数が減少した分,チャンネルが成熟していったのではないかと私は分析しています.
 実際に現在のアナリティクスによれば,「とても熱心なリスナー」が72.7%,「熱心なリスナー」が7.9%を占めており,全体の約8割が濃いリスナーを占める,そのようなチャンネルへと進化しています.そして,この超コア化・定着化を支える巨大な「地下アーカイブ」となっているのが,3年間で449本を積み上げてきた「英語史の輪 (helwa)」の存在です.ここでは,日常的な英語史談義,Discord 上での交流,オフ会報告,コアな研究雑談などが蓄積され,単なる有料配信メンバーの集団という以上の濃いコミュニティが形成されています.
 リスナーさんたちの属性分析からも,heldio の独特な受容スタイルが浮かび上がってきます.まず,男女比が男性45.9%,女性43.8%(無回答10.2%)と,ほぼ五分五分で均衡しています.一般に,語学学習系番組は女性に偏りやすく,IT・学術雑談系は男性に偏りやすい傾向がありますが,heldio はその中間に位置しています.大人の知的雑談メディアとしてバランスよく受け入れられているものと考えています.
 年齢層を見ると,30代が24.3%,40代が25.5%,50代が23.1%となっており,実に大人の30--50代で全体の約73%を占めています.まさに「学び直し」や通勤・家事の合間の知的時間を求める成熟したリスナー層です.さらに職業分布では,会社員が46.3%,自営業が12.5%を占め,英語教員や学生といった層だけでなく,実務の外側にある純粋な知的好奇心として英語史を楽しんでいる一般のビジネスパーソンが圧倒的多数派のようです.
 さらに国内での地域的な広がりを見ると,東京が38.9%と最大ですが,大阪6.7%,神奈川6.0%,千葉3.9%,北海道3.6%と続き,全国(さらには海外)に薄く広く分散しています.大学の講義室であれば物理的な制約がありますが,インターネットの音声配信という特性を活かし,英語史の地方分散化が数字として実現しているのは,興味深いファクトです.
 これらすべてのデータを総括するならば,この5年間は,「マスメディア的なリスナー数の拡大」ではなく「英語史に関心を寄せるリスナーの着実な増加」を示す時間だった,ということです.実利的な英語スキルのためではなく,「英語っておもしろい」「言葉って不思議だな」という感覚を共有し,英語について雑談する文化圏・公共圏がここに誕生したのです.
 大学の研究者が専門分野を掲げてこのようなコミュニティを形成できたことは,稀な事例ではないかと思っています.これまで heldio を支え,一緒に知的な遊び場を作ってくださったリスナーの皆さんに,改めて心より感謝申し上げます.
 これからも heldio は様々な進化を遂げていくものと思われます.直近では,今月6月10日発売予定の近刊 『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)をめぐるお祭り企画やイベントも目白押しです.
 新たな月となりましたし,heldio 5周年のこの機会に,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への入会もぜひご検討ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しに覗いてみていただければ.今月は helwa でも『なぜさんたんげん』の話題が多くなるだろうと思います.
 昨日の heldio 「#1829. heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」もお聴きいただければ.それでは,明日もいつも通り,朝6時に heldio でお会いしましょう.

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