hellog〜英語史ブログ

#1704. a great many years[syntax][phrase]

2013-12-26

 標記の句は現代英語でも用いられるが,文法的にどのように分析されるのだろうか.many years というつながりだと解釈すると,多さを強調するのになぜ形容詞 great が用いられるのか説明できないし,さらに不定冠詞 a が先行するのも解せない.全体が「かなり多くの年」の意となることは予想できるとしても,文法的にはどうなっているのか.手元の複数の辞書では,分析せずに,a great [good] many 全体として,やや略式に「かなり多くの」を表わす熟語ととらえている.例文は少なからず挙げることができる.

 ・ There were a great many people present there.
 ・ I've known her for a great many years.
 ・ A great many people who voted for her in the last election will not be doing so this time.
 ・ Most of the young men went off to the war, and a great many never came back.
 ・ We've both had a good many beers.


 この many は「多数」を意味する名詞ととらえられる.名詞なのだから,a great で修飾されているのも不思議はない.類例として a great multitude もあれば,a large number もある.しかし,a great many years の場合には,複数名詞 years が直接後続しているのが妙だということである.*a great many of years のように of が介在していれば理解しやすいが,a great manyyears が直接に接続するのはどういうわけか.強いて共時的に分析しようとすれば,a great manyyears は同格と解釈するほかない.
 歴史的には,標記の句は「a great many of + 複数名詞」のような構造から of が脱落したものではないか.OED の many, adj., pron., and n., and adv. の語義 6.a によると,「a great many of + 複数名詞」の型は16世紀前半から現れる.現在では of の後には冠詞,指示詞,所有形容詞を伴った名詞,あるいは代名詞が来るのが原則だが,古くは名詞の複数形単体で現れることもあった.一方,語義 6.b では,of を伴わずに a many が直接複数名詞を後続させる用法が挙がっている.「a many + 複数名詞」の型は16世紀後半から文証され,強調した「a great many + 複数名詞」のような表現も,OED の例文としては18世紀から現れている(もちろん実際にはもっと早かった可能性もある).また,語義 6.c では a great many が単体で名詞句として用いられる用法が記述されているが,こちらの初例は16世紀半ばである.
 共時的な立場から統語的に分析しようとすると妙であるという感覚は否めないが,通時的な立場で考えれば違和感は多少なりとも解消するだろう.なお,few を使った同様の表現として She must have cooked a good few dinners over the years. のような例もある.

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