英語史的な観点からすると,現代英語には次のような特徴があると言われている.
(1) Cosmopolitan Vocabulary
(2) Inflectional Simplicity
(3) Natural Gender
(4) Idiomatic Expressions
(5) Spelling-Pronunciation Gap
これは,英語史概説の名著を著した Baugh and Cable によって広められたポイントであり,確かに要点はついている.
(1) 1500年にわたる歴史のなかで,英語は350もの言語と接触し,たえず語を借用してきた.英語に対して影響を及ぼしていない言語を挙げるほうが難しいとも言える.
(2) 古英語の複雑な屈折と比較すると,現代英語の屈折は,名詞であれば複数形や所有格,動詞であれば三単現の s や過去形・過去分詞形などに限られており,実に貧弱である.
(3) 性については,古英語期の文法性 ( Grammatical Gender ) は久しく失われており,現在では指示対象の生物学的な性 ( Natural Gender ) だけを考慮すればよい単純な性体系になっている.
(4) 慣用表現 ( idiomatic expression ) が多いという特徴については,give up, take part in, instead of など,外国語として英語を学習する者にはおなじみの熟語の数々が,その動かぬ証拠である.
(5) 現代英語では,綴字と発音の関係は,一対一とはほど遠い.psychology の <p> はなぜ読まないのか,A はなぜ /a/ ではなく /eɪ/ と読むのか,women の <o> はなぜ /ɪ/ と発音するのか,等々.このように綴字と発音の関係が不規則な例を挙げていけば,きりがない.
現代英語の特徴として,以上の5点はよく選ばれていると思う.他に顕著な特徴はないだろうかと考えてみて大体思いつくことは,究極敵には上の5点のいずれかに行き着いてしまう.なので,私も英語史の授業などでは,素直にこの5点を取りあげている.
・Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 5th ed. London: Routledge, 2002.
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