現代英語で-th という接尾辞をもつ抽象名詞をいくつ挙げられるだろうか.この語尾は起源は印欧祖語に遡り,動詞や形容詞から対応する名詞を派生させてきたが,現代英語では非生産的である.語源的には,動詞につく場合と形容詞につく場合は区別すべきである.現代英語に残る例を列挙してみる.(セミコロンの区切りは,派生された時代の区別を示す.)
 (1) 動詞からの派生(-th )
   bath ,  birth ,  death ,  math ,  oath ;  growth ,  tilth ;  stealth 
 (2) 形容詞からの派生(-th )
   filth ,  health ,  length ,  mirth ,  strength ,  truth ;  dearth ,  depth ;  breadth ,  sloth ,  wealth 
-th の異形に-t という接尾辞もあり,同様に派生機能をもつ.どちらの接尾辞になるかは,音声環境による.以下に例を挙げる.
 (3) 動詞からの派生(-t )
   draught ,  drift ,  flight ,  frost ,  gift ,  haft ,  heft ,  might ,  plight ,  shaft ,  shrift ,  thirst ,  thought ,  thrift ,  weft ;  sight 
 (4) 形容詞からの派生(-t )
   height ,  sleight ;  drought 
その他,例外的に名詞から theft も派生されている.
 (2)と(4)の形容詞からの派生については,派生語の母音と対応する形容詞の母音が異なっていることが多い.これは,当該の接尾辞がゲルマン祖語の-iþô に由来することと関係する.接尾辞に/i/音があることで,i-mutation という音韻過程が引き起こされたためである.
 上記の各例について,もととなった動詞や形容詞を推測してみて欲しい.
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